【斎藤隆氏サミーレポート】米国野球の“大きさ”感じた1214人のドラフト

[ 2018年6月15日 13:20 ]

 今年のMLBドラフトは6月4日から3日間にわたって行われ、計1214人が指名されました。日本とは規模が違うので、指名は「電話会議」で行われ、各球団のGMやスカウト陣は球団事務所のミーティングルームで戦略を練りながら、指名状況を見守ります。私もドラフトの3日間は、朝9時から夜遅くまで事務所に詰めていました。

 パドレスが1巡目(全体7番目)で指名したのは、ライアン・ウェザーズという高校生投手。父はメジャーで19年間プレーした救援投手で、私と同世代です。息子は昨年のU―18W杯で米国代表として優勝。日本戦では7回1安打無失点で、清宮からも三振を奪いましたが、その試合の映像もチェックしました。

 1巡目で指名される選手は、まさにダイヤの原石。しかし、必ずしも全員がメジャーに昇格できるとは限りません。あるデータによると、66%で3人に2人。それが2巡目になると49%、3〜5巡目は32%、6〜10巡目は20%、11〜20巡目は11%と、どんどん減っていきます。才能を発掘するスカウトの力と、それを育てる育成の力。それは永遠のテーマです。

 ミーティングルームではリストアップした選手のネームプレートがボードに貼られ、「高校生」「大学生」、さらにポジション別に分けられています。どこかの球団が選手を指名すると、そのネームプレートを外していきます。やはり、どの球団も重視するのが先発投手で、どんどん名前が消えていく。それだけ価値が高く、育成も難しいということなのでしょう。

 その一方で、大学生の救援投手は人気が低い傾向があります。アマチュア時代から投手の分業化が進む米国ですが、基本的にはまずは優秀な先発投手を獲得する。それから適性を見て、ダメなら救援にするという考え方です。今回も150キロ台中盤を投げるような大学生の救援投手が何人も指名漏れしていました。

 「1214人」に入らなかった彼らは今後、独立リーグに進むか、あるいは野球をやめてしまう選手もいるかもしれません。米国の野球人口の大きさと、ドラフトの難しさを改めて感じました。 (パドレス球団アドバイザー)

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2018年6月15日のニュース