目指すは大学日本一 東洋大・甲斐野 159キロに詰まった父の思い

[ 2018年6月10日 10:30 ]

3連覇を果たし集合写真でスリーピースする、東洋大の(左から)上茶谷、甲斐野、梅津
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 東都大学リーグ3連覇を達成した東洋大が、11日から行われる全日本大学野球選手権に出場する。注目すべきは、今秋ドラフト上位候補に挙がる上茶谷大河、甲斐野央、梅津晃大の3人衆。全員がMAX150キロ超えを誇る右腕だが、その中でも160キロの大台に迫るのが、甲斐野だ。

 昨秋に初勝利を挙げると、5勝の活躍で最優秀投手とベストナインを受賞。今春は守護神として9試合に登板して優勝に貢献し、奪三振率は12・15を記録した。5月16日の立正大戦では、メジャー球団のスピードガンで自己最速の99マイル(約159キロ)を計測したが、「MAX何キロとかにこだわりはない」と表情を変えずに話す。

 そんな甲斐野の表情が緩んだのが、家族の話だった。3人兄弟の末っ子。父・有生(ゆうせい)さんは少年野球のコーチ、9歳上と7歳上の兄2人も野球をしていた一家で育った。「小さい頃から家でずっとボールを触っていた。寝転がっていてもボールを上に投げたりして」。そう話す取材中もずっとボールを握っていた。

 父の夢は甲子園に行くことだった。叶わなかった夢を息子たちに託したが、兄2人同様、甲斐野も東洋大姫路では甲子園に出場は果たせなかった。しかし、父には「甲子園がすべてじゃない」と伝え、プロを見据えて東洋大に進学。その言葉通り、今やドラフトの目玉候補として、大学日本一を決める舞台に臨もうとしている。

 生まれは兵庫。両親は現在も兵庫に住んでいるため、すべての試合に応援に来ることはできないが、父・有生さんは毎試合インターネット中継で試合を観戦している。「LINEに『甲斐野家』という家族のグループがあって、毎試合、父から感想が送られてくる。試合が終わると、通知が凄いことになってる」と笑う。

 優勝がかかった亜大戦前に「優勝してくれ」と父から連絡が来た。立正大戦で投げた159キロの球には父の思いが詰まっていたのだ。昨年も全日本大学野球選手権に出場したが、初戦敗退。1年前の悔しさと父の思いを胸に、甲斐野はチーム7年ぶり5度目の日本一を目指す。 (武本 万里絵)

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