【石井一久氏 クロスファイア】藤浪の復活近し…努力の方向性間違っていない

[ 2018年6月6日 10:00 ]

阪神の藤浪
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 2軍で調整していた阪神・藤浪が3日の西武戦で約1カ月半ぶりに1軍のマウンドに立った。結果は5回1/3を7失点(自責4)で敗戦投手。数字だけを見れば、「今までと変わっていない」と思う人も多いだろう。しかし、メットライフドームで投球を見ていた僕は、むしろ「復活近し」の印象を受けた。

 理由はいくつかある。まずは、藤浪にとって投球の軸になるアウトコースの真っすぐに「角度」を感じる球が何球かあった。最速156キロを記録した真っすぐのストライク率も調べてもらったが、この日は79・0%。今季平均の62・5%を大きく上回った。また、スライダーに切れが戻り、空振りを取ったり、カウント球として使える確率が以前より上がった。これまでは変化球を投げる際、手首の角度やひねり方が捕手の方に向いていないような感じだったが、それが少なかった。

 「変化」があったのは、投球だけではない。この日、藤浪は右翼のブルペンから直接、1回裏のマウンドに向かった。通常、先発投手はブルペンで投球練習した後、試合開始時にはベンチに戻って一呼吸置いてからマウンドへ行く。ギリギリまでブルペンで投げていたというのは、いいフィーリングのまま試合に入りたいという考えだろう。

 5回には俊足の金子侑を一塁に出すと、2度続けて素早いけん制球を投げた。2度目は、わずかにそれて悪送球になってしまったが、タイミングはアウトだった。これまで藤浪はあまりけん制球を投げることがなかったが、元々クイックは速いだけに、けん制を見せることで、足で揺さぶられる回数も減るだろう。

 唯一、ネガティブ要素を挙げるとすれば、あれだけの球を持っているわりには、ヒットの数(今季27回で被安打31)が多いこと。コントロールはアバウトだが、藤浪にはそれをカバーするだけの球威と変化球の切れがある。あとはどれだけ自信を持って投げられるかではないか。1軍復帰戦で白星とはならなかったが、2軍で取り組んできた努力の方向性は間違っていないことを証明したと思う。 (スポニチ本紙評論家)

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2018年6月6日のニュース