3カ月の大谷取材、活躍ぶりに驚嘆 こんなに早く対応するとは

[ 2018年5月28日 10:30 ]

メジャー1年目で驚異的な適応力を見せるエンゼルス・大谷(AP)
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 エンゼルス・大谷を取材するため、キャンプ前の2月上旬から4月末まで約3カ月もの間、米国に長期出張した。帰国後、最も驚いたことはテレビの情報番組が毎日のように大谷の話題を取り上げていたことだった。もちろん話には聞き、SNSなどで映像を見たことはあったが、盛り上がりや注目度の高まりは想像をはるかに超えていた。

 帰国後、周囲から最も多く受ける質問は「こんなに活躍すると思っていた?」というものだった。その度に私は「活躍するとは思っていたけど、こんなに早く対応するとは思わなかった」と答えている。「結果論」と言われてしまうかもしれないが、日本ハム担当記者時代に投打で大谷のすごさを目の当たりにしてきただけに「活躍しない」とは到底、思えなかった。

 オープン戦での投手成績は5試合13回を投げ防御率11・77で、打者成績は打率・125(32打数4安打)、本塁打0、1打点。思うような成績を残せず、当然、日米メディアから「開幕マイナースタート」を心配する声も挙がった。ただ、マウンドで指にかかったボールは一度も打たれていなかったのも事実だった。米国はベンチ前でのキャッチボールが禁止。イニング間の準備が課題の一つだったが、開幕直前に通常より重いボールを使ってのストレッチで代用するようになった。自分に合うウオーミングアップ法を見つけ徐々に環境に慣れていった。

 打撃については「直球というより(メジャーの投手の投球)フォーム自体にワンテンポ遅れる」と話していた。試行錯誤の日々を送ったが、開幕直前に右足を上げず、内側に少しだけひねるだけの「ノーステップ気味打法」を取り入れると、自然と打ち始めた。一見、大きな変化に見えるが、大谷は「形は変わっているように見えるけど、そんなに変わっていない。トップに入る過程を省いたくらい」と言う。左脇を大きく開ける構えはそのままで、早めにトップの位置をつくる。タイミングさえ取れれば、あとは自分のスイングをするだけだった。

 ただ、やはり「こんなに早く対応するとは思わなかった」ことについては担当記者として見る目がなかった。対応力の早さには驚かされるばかりだった。オープン戦で完敗だった14、17年サイ・ヤング賞の右腕クルバー(インディアンス)から今季2号を放てば、マウンドでは日本より滑りやすいメジャー球への対応も開幕に間に合わせた。指にかかった剛速球はもちろん、制球力は試合を重ねるごとに磨きがかかっている。

 5月15日。剛腕バーランダー(アストロズ)に3三振を喫したが、試合後の会見映像を見る限り、大谷の表情は清々しかった。うれしそうにさえ見えた。アストロズとの次回対戦はオールスター戦明けの7月20〜22日(日本時間同21〜23日)。再びバッターボックスでバーランダーと相まみえることがあれば、クルバーとの対決のように快音を響かせる気がしてならない。

 ちなみに「大谷選手ってどんな人?やっぱり真面目?」という質問もよく受ける。もちろん真面目だが、ユーモアだってある。一時帰国のあいさつをした際には「退社ですか?出向ですか?」とお決まりの“記者いじり”を忘れなかった。直後に「君は大谷に何を言われたんだ?」と米メディアに問いただされた時はさすがに困ってしまったが、大谷自身は注目度の高さはどこ吹く風と自然体でメジャー1年目を過ごしている。(記者コラム・柳原 直之)

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2018年5月28日のニュース