【石井一久 クロスファイア】「5番・清宮」から感じる栗山監督の信念

[ 2018年5月9日 11:00 ]

パ・リーグ   日本ハム4―8オリックス ( 2018年5月8日    京セラD )

6回1死、清宮は右前打を放つ
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 日本ハムの清宮幸太郎が1軍デビューして、ちょうど1週間。近藤が故障で離脱したこともあるが、栗山監督は2試合目から5番に起用している。高校出の大物ルーキー。2軍で4本塁打していたとはいえ、「何番で使うか」というのは監督として繊細な部分だったと思う。気楽に打てる下位ではなく、重圧がかかるクリーンアップに置いているところに、栗山監督の「清宮を育てる」という信念を感じる。

 クリーンアップを任される以上、清宮は、たとえ打てなくても、そこに座るだけの「何か」を周囲に見せなければいけなかった。その意味では初打席で、楽天・岸の直球を完璧に捉え、中堅フェンス直撃の二塁打を放ったことは大きかった。最初の1打席で、プロの一流の真っすぐを打ち返すだけの力はあることを、相手チームにも、味方にも証明してみせた。

 アマチュアとプロの投手の違いは何か。変化球の切れや精度とともに、球速以上に速く感じる真っすぐの質だ。岸の直球は日本球界ではトップクラス。スピンが効いて、重力に逆らい、落ちないように進むので、打者は「伸びてくる」と感じる。あの打席は直球一本を待って振ったと思うが、スイングの速さがないと、なかなかあそこまでは飛ばせない。

 今年のキャンプで、清宮の室内での打撃練習を近くで見たが、一番印象に残ったのは、バットに当たったボールが飛び出す時の初速の速さ。打球に角度がつく、つかないに関係なく、他の打者にはない飛び出しスピードを持っている。

 直球への対応を見せる一方で、変化球にはまだもろさを見せ、三振も多い。しかし、高卒1年目の打者にそこまで求めるのは酷だろう。ルーキーイヤーの早い時期から、1軍の投手の球を打席で体感できることが、何よりの財産。それは、近い将来の「3割40本塁打」への土台になる。 (本紙評論家)

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2018年5月9日のニュース