虎のキーマンになれるか 植田にブレークの予感

[ 2018年5月2日 11:30 ]

<広・神>7回、セーフティーバントを決める植田
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 虎のキーマンになれるか。開幕から24試合を終えて12勝12敗と5割の戦いを続けている金本阪神3年目。昨季、リーグ2位の原動力になった救援陣がきっちり仕事をしていて、先発投手も大黒柱・メッセンジャーや秋山を中心に奮闘中。チーム防御率は3・24とリーグトップの安定感だ。ただ、それでもBクラス4位に甘んじている理由は、攻撃陣の低迷にある。

 チーム打率・233はリーグ5位で、総得点(77)、盗塁数(7)ともにリーグ最下位。ベテランの糸井や福留、若手の糸原の活躍が目立つ一方、打線を全体視すれば破壊力、機動力ともに欠けるのが正直な印象だ。

 そんな猛虎の潮目を変えてくれそうな存在が、高卒4年目、スイッチヒッターの植田である。4月29日の広島戦で今季初先発すると、翌30日には2安打3四球と5打席全てで出塁。前日1日にも2安打を記録するなどここまで13打数5安打、出塁率5割、2盗塁と持ち味を発揮している。50メートル5・8の俊足を武器にダイヤモンドを駆け回る姿に、希望を見いだしているファンも多いのではないだろうか。

 滋賀・近江高から14年ドラフト5位指名。俊足攻守の右打ち内野手として入団した植田に、翌春の2軍安芸キャンプで早速、スイッチヒッター挑戦のプランが浮上した。当時の古屋2軍監督、和田1軍監督らの意向が一致して決まった方針だった。しかし、直後に植田が腰痛を発症したことで、取りやめになった。

 プロジェクトが再始動したのは1年目シーズンを終えた後の秋季キャンプだ。就任直後の金本監督が鳴尾浜での2軍キャンプを視察した際、植田が秘める可能性に一目惚れ。「彼は面白い。スカウトに感心しています」と絶賛し、急遽、安芸での1軍キャンプに呼び寄せた。頓挫していたスイッチヒッター挑戦も当時の掛布2軍監督から提案を受け、「オレも大賛成」(金本監督)と即決。より、俊足を生かせる左打席への挑戦は、植田にとって転機となった。

 両打ちを確立させるための努力は多岐に及んだ。並々ならぬスイング量を重ねる一方で、日常生活ではお茶漬けをはじめ、簡単な食事を摂る際には利き手とは逆の左手でスプーンを握るなど、普段から「スイッチ」に慣れるため尽力。時間をかけ、地道に努力した結果、いつしか「右(打ち)の方が、“始めたばっかりみたい”って言われるんです(笑い)」と冗談交じりに漏らすほど、左打席での違和感が無くなってきた。

 17年シーズン中盤に1軍初昇格を勝ち取ると、本格挑戦から2年半が経った今、1軍のスターティングメンバーに名を連ね、相手チームをかき乱す「いやらしい存在」としてブレークの予感を漂わせている。まだ22歳。勝負はこれからだ。直面していくであろう、高い高い壁を乗り越えられるか、注目していきたい。(巻木 周平)

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2018年5月2日のニュース