人間味あふれる人だった衣笠氏 国民栄誉賞にドギマギ「誰に礼を言ったら…」

[ 2018年4月25日 09:40 ]

“鉄人”衣笠祥雄さん死去

87年、国民栄誉賞表彰式でレリーフを手に笑顔の衣笠氏
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 【スポニチ本紙記者が語る衣笠さんの素顔】 衣笠は「打てる捕手」として注目を集めた。加えて、足もある、肩もいい、と。だが、2、3年は芽が出なかった。リード面が良くない、と言われていた。野球をやる気力さえ失っていた時期もあった。三振のたびに浴びせられるヤジ。「引っ込め!ハーフ、代われ」。三振した後に涙を見せることもあった。打撃のふがいなさばかりではなかった。

 平安高3年は春夏に甲子園に出場、いずれもベスト8に進出している。カープに入団が決まった時は野球をよく知らない人まで喜んだ。アフリカ系米国軍人と日本人女性の間に生まれた超高校球児がやって来る。原爆の広島へ。まさに平和の象徴のような選手が…と。球団、監督、コーチ、チームメート、誰もが彼に温かだった。

 セ・リーグ最多161を数えるほど死球の多い選手だった。よけるのが下手だから、肌の色もあって当たったのかどうかアンパイアが判断できず、つい一塁を与えている、という声もあった。だが「これもバッティングの技術の一つ」と胸を張っていた。

 国民栄誉賞を受けた時は「誰に礼を言ったらいいんだろう」とドギマギしていた。「やっぱり、おふくろと監督、同僚…。いや、ファンが私を強くしてくれた。ファンの励ましが押し上げてくれた」と。鉄人もやはり人の子であった。人間らしく、優しく強く生き抜いたと思う。合掌。(田中二郎 元広島担当・元大阪本社常務取締役編集担当)

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2018年4月25日のニュース