無理は承知 井口監督があえて口にした野球界への提言

[ 2018年4月21日 10:15 ]

藤崎台県営球場でのソフトバンク戦が中止になり、即席のサイン会を行ったロッテ・井口監督
Photo By スポニチ

 口にしなければ始まらないことがある。

 4月14日、熊本・藤崎台県営球場で行われるはずだったソフトバンク―ロッテは雨天によるグラウンド不良で中止となった。熊本出身のタレント・コロッケのものまねショー、両軍選手によるサインボールの投げ込みや即席のサイン会など、熊本地震から2年が経過した被災地の球場はプレーボールがかからなかったことを忘れるほど、熱を帯びた。

 約30分間、左翼席のファンへペンを走らせたロッテ・井口監督は「振り替え(の試合)はヤフオクドームじゃなくて、熊本でできたらいい」と提言した。後日、その真意を聞けた。「(熊本での再試合が)難しいということは分かっていますよ。ただ、言わないとね」。最初から無理を承知での発言だった。

 プロ野球の地方開催は4、5月に行われることが多い。開幕後、交流戦がスタートするまでの期間は夏休みや優勝争いの終盤戦と違い、比較的、集客に苦労するからだ。地方の興行主は球団から興行権を買い取りやすく、球団側も売りやすい。だが、この代替試合が夏休みや終盤に組み込まれれば井口監督の希望した「再試合」は高すぎるハードルだ。

 それは百も承知で言った。信念は、できるこをやる。16年の熊本地震ではインターネットで集った約636万円に自らの義援金を加えた1000万円を熊本県宇土市の新市庁舎建設へ寄付した。「目的」を絞ったのには理由がある。「一番、復興の元になる部分を再建するのが大事」。困窮した被災者を直接支援するより、復興するための「旗振り役」となる市役所の機能を回復させる、「急がば回れ」の考え方だった。

 あの「再試合」発言もそう。口にしなければ始まらない。井口監督の言葉は野球界への提言にも聞こえた。(記者コラム・福浦 健太郎)

続きを表示

2018年4月21日のニュース