二刀流伝説の始まり ベーブ・ルース175m弾の地は大谷とつながっていた

[ 2018年4月10日 11:00 ]

当時のホームベースの場所に立つルースの玄孫のレクシーちゃん(中央)、マディちゃん(右)
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 エンゼルス・大谷がメジャーデビューする100年前。ベーブ・ルースが春季キャンプ中に伝説の特大本塁打を放った。当時のキャンプ地で100年記念イベントを取材すると、二刀流の原点、本塁打全盛時代への転換点、そしてルースと大谷の意外な接点が浮かび上がってきた。 (奥田秀樹通信員)

 100年記念のイベントが開催されたのは3月下旬。場所はアーカンソー州の山間部にある小都市ホットスプリングスだ。1918年3月17日だった。レッドソックスのエース左腕・ルースが、同地で行われたキャンプ中、飛距離573フィート(約175メートル)の本塁打を放った。

 ルースの孫であるトム・スティーブンスさん(65)を筆頭にひ孫と玄孫(やしゃご)の3世代が出席し、全米各地から野球歴史家が集結。「打球はロケットのように飛び、今も残るワニの養殖場まで届いた。史上初めて500フィートを超えた打球。みんなが度肝を抜かれた」。ルース研究で第一人者のビル・ジェンキンソン氏は語った。

 球場のウィッティントン・パークがあった場所は、現在は駐車場。玄孫のレクシーちゃん(9)とマディちゃん(4)姉妹が当時のホームベースの場所に立ち、歴史的瞬間が再現された。

 当時の主流は少ない得点を守り切る「スモールボール」。しかし、この一発が当時の監督の反対を押し切ってルースが打者との二刀流に挑むきっかけとなり、同時に米国中が本塁打の魅力に目覚めて国民的娯楽に発展する契機ともなった。

 駐車場の背後にそびえる丘の斜面が当時のスタンドの名残をとどめている。アーカンソーの歴史家マイク・デューガン氏は「当時の写真を見ると、1万5000〜1万8000人のファンが見ていたと推測される。本塁打はファンを呼び、金もうけにつながるとオーナーたちが気づいた瞬間だった」と証言した。

 ホットスプリングスはプロ野球の春季キャンプ誕生の地。その理由を、当時についての著書があるダン・デュアラン氏が語る。「1886年、カブスの前身ホワイトストッキングスがここに決めたのは、温泉(=ホットスプリングス)があったから。冬の間に酒浸りになった体を温泉でアルコールを抜く。効果はてきめんで、その年に優勝した」。他球団もならい、多い年で5、6球団、合計250選手が訪れたという。

 豪華なホテル、レストランに加え、ゴルフ場、カジノなど娯楽施設も充実。選手の受けも良かった。レッドソックスは同市で13シーズンもキャンプを実施。ルースが常連だったホテルやナイトクラブが今も残る。

 ルースと大谷をつなぐものが、この地にある。ホットスプリングスは、山間の温泉町という共通点などにより93年から岩手県花巻市と姉妹都市の関係となった。大谷の母校・花巻東の生徒も人材交流で何度も訪れている。

 コンベンションセンターの正面付近には、宮沢賢治のモニュメントが提携20年を記念して作られた。市の担当者メリー・ズニックさんは、大谷の噂は高校時代から耳にしていたといい「今年は25周年で約30人の代表団を互いの市に派遣し合う。(大谷の米デビュー年に)何という巡り合わせなんだろう」と不思議な縁に感嘆した。

 歴史家のティム・リード氏は、米国の第1次世界大戦への参戦も本塁打が野球の華となる呼び水になったと主張。「オーナーもルースが打つと“1個10ドルのボールがなくなる”と、いい顔をしなかった」。しかし、米国が1917年に戦争に加わったことで選手不足に陥った。

 「ルースを打席に立たせるしかない。その限られたチャンスを彼はものにした」

 175メートル弾で、誰も「打者・ルース」を否定できなくなった。その姿は、開幕直後から投打の活躍で懐疑的な声を封じた大谷と見事なまでに重なった。

 ▽ホットスプリングス アーカンソー州の中央部に位置し、人口は約3万8000人。温泉で知られ、州内随一の観光・保養都市。1800年代後半はギャンブルが盛んで治安が悪化し、ギャングもはびこった。現在は一掃されたが、その名残として市内に「ギャング博物館」がある。元アーカンソー州知事で第42代米国大統領のビル・クリントン氏が、小学校から高校時代を過ごした地としても有名。

 ▽花巻市 岩手県の中西部に位置し、人口は約9万6000人。西部の花巻温泉郷が観光地として有名。宮沢賢治生誕の地で、前の5000円札の肖像になった新渡戸稲造ゆかりの地としても知られる。わんこそばが名物で、全国大会は今年2月で60回目を迎えた。1954年に周辺の町村と合併して花巻町から花巻市に。さらに06年の「平成の大合併」で大迫町など3町と合併し、現在の形になった。

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