161球熱投実らず…富山商・沢田 力負けも「勝てたゲームだったかな」

[ 2018年3月25日 15:08 ]

第90回選抜高校野球大会第3日・2回戦   富山商2―4智弁和歌山 ( 2018年3月25日    甲子園 )

<富山商・智弁和歌山>富山商の先発・沢田
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 マウンドで、初めて見せた激情だった。9回2死一、三塁のピンチ。2点ビハインドで、一人でも生還を許せば試合は決まってしまう。2ストライクと追い込んだ後、富山商・沢田は左打者・黒川の外角いっぱいにストレートを投げ込んだ。バットはピクリとも動かない。9回裏の反撃に勢いをつける見逃し三振。ポーカーフェイスで投げ続けてきた右腕が161球だけは吠えた。

 「どうしても抑えてやろう、と。ヨッシャーって感じでした」

 強打の智弁和歌山を向こうに回し、エースはすべての力を出し尽くした。3、4回に1点ずつ失いながら、決壊を許さない。ハイライトは5回訪れた3番・林との対戦。3回1死一、二塁のピンチでは、6球中5球フォークを投げる大胆な配球で、最も警戒していた打者を空振り三振に料理した。「2回も三振を取れたので、自信になりました」。屈指のスラッガーを一度も出塁させず、確かな手応えは得た。

 MAX143キロを誇る本格派。前半こそ快音を許さなかったものの、強打線への警戒心から普段以上にスタミナを消耗した。「7、8、9回くらいは疲労があって…。(超満員で)緊張感もあったし」。同点で迎えた8回2死から二塁手がエラー。四球を挟んだ一、二塁のピンチで、池田に投じたスライダーが甘く入った。打球は中前へ。センターの失策も重なり、2人の走者が本塁を駆け抜けた。失投、そして守備のミス…。強豪に力負けした屈辱を感じなかったからこそ、敗者としてのインタビューで最初にこう切り出した。

 「勝てたゲームだったかな、と思います」

 2014年夏。富山商のエースとして2勝した森田駿哉(現法大)の勇姿をアルプススタンドで見て、伝統校の門をたたくことを決めた。ベスト4入りした昨秋の北信越大会後、レベルアップのためにフォーム改造を決意。右ヒジの位置を高くすることで、球威アップを目指した。「前半みたいに、いいコースにいけば抑えられるということは分かった」。成長を実感し、進化を認めても、さらに高いレベルの課題は残る。

 「夏に向けて、やはり制球力とスタミナが課題。そこをしっかり向上させて、また戻ってきたい」

 7番打者としても、2回に先制の左前適時打。2つの死球を受けながら、最後まで「富商」のマウンドを守り抜いた。初勝利を目指す夏へ――。甲子園の土は手にせず、背番号1は春がまだ遠い富山へ帰っていった。

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2018年3月25日のニュース