広島・中村奨成“コミュ力”にまさかのダメ出し…倉コーチが明かす理由とは?

[ 2018年3月13日 10:50 ]

7日の社会人オール広島とのプロアマ交流戦の6回、アレハンドロ・メヒアの2ランで生還し、ナインとタッチをかわす中村
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 「走攻守3拍子そろった捕手」という肩書きでは魅力を説明しきれない。広島ドラフト1位・中村奨成捕手(18=広陵)には、まだ焦点の当たっていない才能がある。それは、“コミュ力”の高さ。コミュ力=コミュニケーション能力の略語だが、この若者言葉を使った方が中村奨により迫れる気がする。

 自ら先輩に話しかけに行くことに躊躇(ちゅうちょ)はない。顔をくしゃくしゃにする笑顔を武器に、スーッと先輩の懐に入る。中村奨のいじり対象の筆頭は、同期入団で大卒のドラフト3位・ケムナ(日本文理大)。年上にちょっかいを出しては反撃を受ける姿をキャンプ中に度々目撃した。

 ひとたびマスクをかぶればスイッチが入れ替わる。ブルペンでは、先輩投手にも遠慮しない。「今のイメージで!」。「意識強く持ったままで!」。褒めるのは簡単。中村奨の場合は、納得いかなかったことにも意見する。生意気ということではない。考えを伝えることに、年齢差を気にするような器ではない。

 「先輩にもしっかり声を出して意見するというのは、特別意識するというよりかは、当たり前のこととしてやるようにしています。“なんやコイツ”と思われるぐらいでもいいと思っています」

 “猫をかぶっていた”期間はすぐに終わった。1月上旬、先輩との合同練習では「緊張しています」と連呼していたときが懐かしい。すぐにチームに溶け込んだ。キャンプ序盤、「ブルペン捕手の方が声が出てるのはアカンやろ」と倉2軍バッテリーコーチに叱責された。それ以降、ブルペンで誰よりも声を出して盛り立てるのは、中村奨になった。

 しかし、キャンプの総括のためテレビインタビューに応えていた倉コーチから、まさかの発言が飛び出した。「奨成は捕球面で一番の変化があったけど、コミュニケーションの部分はまだまだですね」。一見、秀でている能力に不合格を突きつけたのだ。あまりに意外な回答の真意を確かめた。

 「確かに奨成は、コミュニケーションは物怖じせずにできる。でも一社会人としての礼儀も必要だと思う。投手に“なんやお前”と思われたら終わりになってしまうから。まだ高校生の話し方だったり、言葉が足らない部分がある」

 若者としての“コミュ力”は認めた上で、大人として、さらに言えば捕手としての対話能力を課題にあげた。これを高校を卒業したばかりの18歳に求める。コミュニケーションひとつ取っても、与えられるハードルの高さに、中村奨への期待の大きさを垣間見た。(記者コラム・河合洋介)

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2018年3月13日のニュース