鳥谷 年々強くなるVへの思い「若手は優勝を明確な目標に」赤星氏に激白

[ 2018年2月10日 09:30 ]

鳥谷(左)と握手する赤星氏
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 トリが笑った。決意も語った。阪神・鳥谷敬内野手(36)が9日、昨年に続きスポニチ本紙評論家・赤星憲広氏の直撃インタビューに本音で応えた。2000安打や連続試合出場など個人記録を達成してきたが、年々強くなっているのが優勝への思い――だと吐露。人間的な成長を指摘されると、その要因が赤星氏にあった!?ことも判明した。

 赤星 昨年に続いて、この時期に話を聞きたいと思います。昨年とは全然、気持ちも違うよね。

 鳥谷 そうですね。一応、え〜、う〜ん、試合にも出られそうなので…。

 赤星 ハハハッ

 鳥谷 気持ちの余裕というよりは、体もしっかりと動けているので落ち着いてできています。

 赤星 今年、ここまではどう?

 鳥谷 体は順調に来ています。あとは実戦が入ってきて、その中で感じたことを一つ一つクリアしていければいいかなと。

 赤星 打撃練習では、良い意味で脱力して、大きく振っているなと見ている。

 鳥谷 力を入れたりとか抜いたりはいろいろとやっているのですが、わざと力を入れたときでも自分の感覚とはずれないように意識しています。

 赤星 昨年はそれができる状況ではなかった?

 鳥谷 そうですね。ずっと大事に大事にやっていましたね。

 赤星 ノックでもセカンドとか、あと(7日は)センターも守っていた…。

 鳥谷 センターは、たまたま内野がもうたくさんいたので、ランニングする意味も兼ねて守っていただけですけどね。セカンドは、一応準備をしておいてくれとは言われました。

 赤星 見ていても、チームの雰囲気は良さそう。優勝したいという思いは年々強くなってきているのでは?トリ自身ももう05年から遠ざかっているし、当時は2年目で引っ張る立場ではなかったよね(※1)。

 鳥谷 個人的には、もうあと何年もできないし、自分が試合出ているときに優勝したい気持ちはやっぱり年々強くなってきていますね。いい思いをもう一度したいなと思います。でも一番は若い選手に優勝を味わってもらいたい。優勝したいなあではなくて、優勝を明確な目標としてほしい。経験したメンバーがもうほとんどいないのでね。

 赤星 トリと能見と球児ぐらいかな。本当に優勝っていいもんね。

 鳥谷 その時(05年)はよくわからなかったですけど、優勝できない年が続くと、あのときは良かったんだなとなりますよね。チームは強くて、まだまだ何回もできると普通に思っていましたから。繰り返しますが、年々、もう一度優勝したい思いは強くなっています。

 赤星 この年での感じ方は、2年目での感じ方とは違うだろうしね。勝利後の表情を見ていると、一勝一勝の重み、喜びも増してきているのではないの?

 鳥谷 どうでしょう。でも、勝つことが難しくなってきているのかもですね。

 赤星 昔も今も同じ一つの勝ちでも、鳥谷が変わったということなのかな。

 鳥谷 年をとったんですよ(笑い)

 赤星 昨年は大きな1年だった?

 鳥谷 昨年は、ダメだったら、もう本当に辞めることを考えないといけなかったですし、自分ともう一度向き合って、勝負しないといけなかったので、変な言い方ですけど、やりがいもありました。一昨年の成績(※2)があったことで、いろいろと勉強できたことはありますね。

 赤星 鳥谷の意地を見た。

 鳥谷 何とかしたいという気持ちが強くて、とりあえず1年間ずっと試合に出られたことはよかったと思っています。

 赤星 昨年はまず試合に出ることが目標だったけど、今年は今は出られる立場にいる。あまり数字を気にしないのは知っているけど、もう言ってもいいんじゃない?

 鳥谷 どうですかねえ。当然、打率3割も打ちたいし、いい数字を残したいというのは絶対にありますけど、チームが苦しいときに1本を打ちたい。打点だったり、ホームランだったり。若い選手が多いので、僕とか福留さんとかが何とか勝ちにつなげられるようにしたい気持ちが強いですね。

 赤星 打順のこだわりは?金本監督の構想にも、さまざまな選択肢はあると思う。

 鳥谷 打ちやすい打順はありますけど、でも監督が勝つためのベストな形を組んでいるので、その中で自分の役割を果たさないといけないと思っています。

 赤星 キャプテンマーク『C』は一度外れたが、チームを引っ張っていく気持ちは変わらない?

 鳥谷 いや、もう福留さんに任せていますから(笑い)

 赤星 ハハハッ

 鳥谷 福留さんはどんどん言っていくタイプの方ですし、若い選手にはいいのではないかと思っています。サポートができたらなとは思います。

 赤星 若い選手にもっとこうしろとか、そういう声かけは年々増えていっている?

 鳥谷 基本的にはあまり…、どうですかねえ。

 赤星 ボクがいっしょにやっていた時はトリは若かったけど、今はけっこう積極的に盛り上げているよねえ。

 鳥谷 盛り上げるのはやっていますね。おじさんがやれば若い選手も楽だし。

 赤星 トリが言えば雰囲気が変わるし、逆に言われたりもしながらね。以前はトリもあまり言わなかったし、若い子たちもあまり言ってこなかったけど、今はそういうやりとりが増えてきたよね。

 鳥谷 そういう年代になったのかもしれませんね(笑い)。昔はそういうの絶対に無理だったじゃないですか。そこ言えるのかな…みたいな(笑い)。今はみんな仲良いですし、昔が仲が悪かったという話ではなくて、今はそういう風にやっていこうというチームの方針がありますしね。

 赤星 年の差が変わるわけではないので、それぞれ年を重ねても自分とトリの関係も変わらないけれど、グラウンドの中での振る舞いは明らかに変わっている。後輩とよくしゃべるのを見る。一緒にやっていた時は、後輩が入ってきてもそんなにしゃべるタイプではなかった。変わってるなと思っていた。でも今は、やっと普通の…。

 鳥谷 普通になりました?

 赤星 でも本来はこういう人なんよ。でも、出さない、いや出せずにいたんじゃないかな。『鳥谷敬』を無理くりつくっていたようにもみえた。

 鳥谷 メディアにつくられたとか。

 赤星 いろいろなイメージを言われて損していたけど、いやいやそんなヤツじゃないからって僕らは思う。それがやっと普通になって、うれしいよ(笑い)

 鳥谷 ………

 赤星 否定もないの?(笑い)

 鳥谷 まあ年もとったし、ブスッとしていたら、子どもに“何で怒っているの?”って言われるし。

 赤星 アハハハハハ

 鳥谷 環境が、例えば選手会長したりとか、キャプテンしたりとか、そういうことをしないといけない状況に追い込まれたので、タイミングでそういう役をやらせてもらったことで自分がいい方向に行ったのかもしれません。

 赤星 よかった、トリに選手会長を引き継いで!

 鳥谷 全力で断ったからね。

 赤星 ホント、全力で否定されたからね!

 鳥谷 いや、マジで、ちょっと勘弁してくださいよって。

 赤星 オレがケガして辞めるって言っているのに、それでも受けようとしないからさあ。

 鳥谷 いやいや、それでも無理ですってね。

 赤星 辞める時、トリに最初に電話したんだから。

 鳥谷 引退される電話もらったときも、でも選手会長は無理ですって言いました(笑い)

 赤星 そこ否定するんかいって思った。“わかりました、赤星さんが引退するんだったらやります”って言ってくれるのかと思ったら…。

 鳥谷 それだけは無理です、違う人にしてくださいって言いました(笑い)

 赤星 全力で否定されたからね。思い出すわあ。オレのここ(心臓)にぽっかり穴が空いているときにさあ。

 鳥谷 すみません、ふつうに断っていましたね。

 赤星 そうだよ。それがトリらしかったんだけどね(笑い)

 赤星 今年のチームはどう?

 鳥谷 ピッチャーは、特に後ろがしっかりしていますし、先発も数はいます。故障がなければ、いい戦いができると思います。ただ、センターライン(捕手、二遊間、中堅)が決まっていないので。二遊間というのは、その2人のコンビだからゲッツーが取れるというのもあると思う。その1個2個で流れが変わったり、勝ちが負けに変わったりもすることがある。できればですけど、コンビを組んでやる方がいいのかなと思いますけど、でも、逆にまだ決まっていないから競争になってチームのレベルアップになるのかもしれない。どっちがいいのかわからないですが、誰がなるにしてもある程度固定して1年間戦えればいいと思います。

 赤星 センターラインが決まっていないチームって、あまりないよね?

 鳥谷 野球をずっとやってきましたけど、ないですね。その中心のポジションをみんなで争っているっていうのがないですし、もしかしたら良い方向に行くかもしれないですよね。

 【注釈】

 ※1 05年当時、鳥谷は入団2年目の24歳。31歳の今岡が選手会長を務め、37歳の金本、下柳、矢野がチーム最年長だった。鳥谷は「7番・遊撃」で開幕スタメン。交流戦以降は不振の藤本、関本に代わって2番に定着し、2本のサヨナラ本塁打などで03年以来2年ぶり5度目のセ・リーグ優勝に貢献。チーム遊撃手では96年久慈以来9年ぶりのシーズン全試合出場を記録した。

 ※2 16年は「6番・遊撃」で開幕も、序盤から打撃不振に苦しむ。数度の打順変更も効果なく、6月には自己ワーストの28打席連続無安打。7月24日の広島戦ではスタメンを外れ、連続試合全イニング出場記録が667試合でストップした。以降主に代打で連続試合出場記録を継続する間、遊撃スタメンを務めた北條が活躍したため、先発復帰した9月以降は新人の04年以来12年ぶりに三塁を守った。シーズン打率・236は自己ワースト。36打点は1年目の17打点に次ぐ少なさだった。

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