殿堂入りの金本監督 誇れるのは「僕の中では連続無併殺」のワケ

[ 2018年1月16日 05:30 ]

野球殿堂入り発表 ( 2018年1月15日 )

星野仙一氏のレリーフをはさんで記念撮影する原氏(左)と阪神・金本監督
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 1492試合連続フルイニング出場の世界記録など現役時代に数々の記録を残した阪神・金本知憲監督(49)が15日、都内の野球殿堂博物館で競技者表彰のプレーヤー表彰に選出された。昨年で現役引退後5年が経過。阪神在籍選手では史上初となるノミネート即の殿堂入りとなった。4日に死去した星野仙一氏(享年70)も昨年、殿堂入り。今は亡き恩師に「“選ばれました”と報告したかった」と、こうべを垂れた。

 「鉄人」の胸に、新たな勲章が加わった。過去に4人しかいなかった資格1年目での殿堂入り。阪神に在籍した選手では史上初の偉業を喜びつつ、壇上では「本当にこんな僕がいいのかな、という。年齢的にもまだ若いですし、貫禄も実績も大してないんですが、本当に恐縮する思いと感謝の気持ちとが交錯しております」と率直な胸の内を明かした。

 亡き恩師に、こうべも垂れた。阪神時代の監督で、4日に死去した星野氏に続く殿堂入り。「去年、星野さんが選ばれて本当、入れ替わるように私が選ばれまして。“選ばれました”という報告がしたかったですね」。そして、亡き恩人の期待にも応えた。野球を始めたきっかけは「親戚のおじさんに勧められて」。昨年11月に他界したその“おじさん”から「殿堂入りというのがあるから、そこまで目指して頑張れ」と言われた当時の記憶も鮮明によみがえった。

 エリートコースを歩んで、たどり着いた殿堂ではない。広陵高から一浪を経て東北福祉大へ進み、91年ドラフト4位で広島に入団。体重78キロと線が細く、2歳上の野村、同年代の緒方、江藤、前田らの後塵(こうじん)を拝した当時を常々「特打にも呼んでもらえなかった」と自嘲気味に振り返る。這い上がるためにウエートトレーニングを採り入れると同時に、山本一義打撃コーチとの血のにじむような練習を積み重ね、鋼の肉体と心を手に入れた。そして球史に、その名を刻みつけた。

 1492試合連続フルイニング出場は言わずと知れた世界記録の金字塔。今回の殿堂入りも、そこが大きく評価された。金本監督も「そこを評価していただいたことは嬉しく思います」と話したが、自身の中では、それよりも胸を張れる記録がある。サイクル安打でも、トリプルスリーでもない。プロ野球記録の1002打席連続無併殺打だ。「みんなはフルイニングというイメージを持っているかもしれないけど、自分の中では連続無併殺。打率が下がる局面で全力疾走したという証でもある。これが何よりの、僕が一番誇れるチームプレーというか、チームのための全力疾走」と、うなずいた。

 数字だけではない。04年には左手首を骨折したまま連続フルイニング出場を継続し、自身初タイトルとなる打点王も獲得。まさに、記録にも記憶にも残る「鉄人」だった。

 この日、表彰式に出席した山本浩二氏とは喜びを分かち合えた一方で、東北福祉大・伊藤義博監督、広島・三村敏之監督、同・山本一義打撃コーチ、阪神・星野仙一監督といった野球人生の節目に導いてくれた恩師たちはすでに故人となっており、勇姿を見せられなかった。だが、その教えは今も胸の中に息づいている。「僕も思ったより(育てる難しさを)痛感しています。想像以上ですね」。恩師たちから受け継いだ指導手法を随所に採り入れ、今度は自分が、次代の日本球界を担う人材を育成する番だ。(惟任 貴信)

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