NPB斉藤新コミッショナーに聞く 経済畑の知恵生かし実りある再分配を

[ 2018年1月4日 13:30 ]

新春球界インタビュー=斉藤惇コミッショナー(78)

球界の未来について、自らのビジョンを語る斉藤コミッショナー
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 資金の再分配で野球界全体の繁栄を――。昨年11月に就任した日本野球機構(NPB)の斉藤惇コミッショナー(78)は野村証券副社長、日本取引所グループCEOなど要職を歴任。経済畑での経験を生かした施策が期待される。新春インタビューではプロ野球界でプールした資金を野球界全体に再分配することで、さらなる発展につなげたい考えを明かした。 (取材、構成・鈴木 勝巳)

 ――今回の就任の経緯を教えてください。

 「オーナーの方々から去年の秋に依頼を受けた。私は自分で職を選んだのは、最初に(野村証券に)就職した時だけ。あとは皆さんが“おまえ、これやれ”とおっしゃるような仕事をお引き受けした。今回もそう」

 ――就任を決意した理由は?

 「野球は国民的スポーツ。ただ他のスポーツも伸びてきて、子供の数が減るとの問題もある。なんとか野球を盛んにしたい、というお話をうかがった。私は産業再生機構も東証も、順風満帆にいっているというわけではない産業や企業を支援するような形だった。そういう流れの一つかなと思っている」

 ――経済畑の豊富な経験に期待も大きい。

 「ある程度、産業としても大きくならないと。ちゃんとした報酬だとか、ノンプロの人を支援するにしても資金がいる。口先だけで野球の繁栄、復活といっても、やはり先立つものがいる」

 ――プロ、アマの共存共栄が野球界の盛り上がりには不可欠。

 「この団体(NPB)自体が収益を上げる必要は別にない。野球界全体は、ある程度資金が必要。プロ以外のいろいろな団体が資金的に苦労しながらやっておられる。全体が盛り上がるよう考えを取り入れなければ」

 ――野球界全体での資金の再分配。

 「我々で資金をプールして、支援金でしょうけど、再分配みたいなのをつくれたらいい。そういう意味で(プロアマ合同の)日本野球協議会はつくられたと思う。どのスポーツ振興も資金がいる。オリンピックは国の助成金で指定選手を集めたりするけれど、野球はそういうわけにはいかない。自分たちで知恵を出さなければ」

 ――昨季は総観客数が初の2500万人突破。プロ野球にはまだポテンシャルがある。

 「(各球団の)オーナーの方々も“野球を持って良かった”という気持ちにしないと。なかなかコストがかかって大変。(黒字、赤字の割合は)半々ですかね、今。赤字の方が多いかもしれない。オーナーも知恵、商売が巧みな方が多い。よくご意見も聞かせていただきたいと思う」

 ――共存という意味でも黒字球団が一つでも多く。

 「それはそう。赤字だけ担いで、なんぼスポーツといっても…。特にプロですから。ただ、決していきすぎて金もうけをしようということではない。必要な資金をペイする。選手にも報いなければいけないし、楽しい野球をすることでファンにも報いる、ということを考えないと」

 ――ただ、大リーグと市場規模、平均年俸など大きな差がある。マンフレッド・コミッショナーとは?

 「(就任を祝う)お手紙が来ました。“ぜひ一度お会いしたいですね”と返事をした。いずれどこかでチャンスを見つけたい」

 ――どんな話を?

 「一番知りたいのは、アメリカのビジネス的野球はどういうふうに(一時の低迷から)リカバリーしたのか。そして今、どうしてあんなに高いペイが払えるのか。ヒントはものすごくあると思う」

 ――大リーグは放映権料を一括契約して分配している。

 「関係者とよく話してみます。だいぶ、媒体(CS放送、スマホなど)が変わってきた。単に全部共有化して再分配というのが可能なのか。それが本当にいいのか、という問題もあるし当然反対、賛成の方もいる。意見を聞いて、いい方法があれば考えたらいい」

 ――さまざまな課題に取り組む上で、自身の経歴において球界で一番生かせる部分は?

 「私は5つぐらい仕事をしてきた。産業再生をやる時も記者の方から、あれは事業再生ですから“おまえ、ど素人だろう”とものすごく言われた。しかし、経営というのは素人かどうかより、人をどうするか。人のモラルというか、やる気、アイデアを吸い上げ、実現していく。形は違っても基本は同じ」

 ◆斉藤 惇(さいとう・あつし)1939年(昭14)10月18日、熊本県生まれの78歳。慶大商学部卒。野村証券副社長を経て、産業再生機構社長としてダイエーの再建などに尽力。東京証券取引所社長時代には大阪証券取引所との経営統合を実現し、両取引所を傘下に置く日本取引所グループのCEOに就任した。資産運用会社「KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)ジャパン」会長などを歴任。座右の銘は孟子の「至誠天に通ず」。

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