ラミ監督支えた“名相棒”DeNA・丸山通訳 同じ表情、口調で心も訳す

[ 2017年12月25日 08:30 ]

取材を受けるラミレス監督(中央右)を通訳する丸山通訳(中央左)
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 2017年のプロ野球で存在感を見せたのがDeNAだった。レギュラーシーズン3位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜き、19年ぶりに日本シリーズへ。指揮を執るアレックス・ラミレス監督(43)の隣には常に丸山剛史通訳(41)の姿があった。12球団唯一の外国人監督を、選手やコーチとつなぐ役割として支えた。 (中村 文香)

 ◆今年から監督付き

 DeNAは22日に仕事納めを迎えた。日本シリーズ進出は98年以来。日本一には届かなかったが、横浜移転40年目は収穫の年だった。充実の表情で一年を振り返るフロントマンやスタッフの中に、丸山通訳の顔もあった。今季からラミレス監督付き通訳となってシーズンを戦い抜き、今月は名球会の行事でハワイにも同行。ようやく迎えた、ゆったりとした時間だ。

 「おまえはこんなもんじゃない。エースになりたいんだろ。それなら、エースらしい投球を見せてくれ!」 

 ソフトバンクとの日本シリーズ第2戦。初回の守りを終えてベンチに戻った先発・今永に、ラミレス監督が熱っぽく話し掛けた。状態が悪く、先制されたばかり。いつも冷静な指揮官には珍しい口調だった。丸山通訳は、同じ表情、同じ口調で、日本語に訳した。

 カツが効き、今永は2回以降を無失点に抑えた。試合には敗れたが、ラミレス監督の言葉が左腕を変えた。

 「僕にとって、あの場面はシーズン中に何百、何千とあった中での一つにすぎないんです。どんな状況でも、通訳は間違えてはいけないですから」

 選手、コーチにどう伝えるか、その役割は重要だ。ニュアンス一つで、誤解が生じる可能性もある。だからこそ「監督が感情を見せるのなら、感情を出す。面白くて笑いながら言っているならばそれも出す。正確性が一番大切だと思っています」と任務を語る。

 ◆前職はキヤノン

 丸山通訳の前職は、ラグビートップリーグ・キヤノンの通訳。会社員から転じて務めたスポーツ通訳の仕事に「凄くやりがいを感じた」という。そんなときに見つけたのが、DeNAの求人だった。入社1年目の16年は主に2軍の外国人選手を担当。シーズン後、監督担当を打診された。

 ラミレス監督は、自らを「データマン」と呼ぶほど数字を大切にする。「印象に残っているのは“90%はデータ”だという言葉。監督室にいる時は、常に数字を見ていると言っても過言ではありません」。だから、丸山通訳も指揮官が使いそうな細かい数字を事前にチェックすることが日課になった。同時に、時間があればラジオや映画で英語に触れ、通訳の技量を高める。

◆指揮官も全幅信頼

 ラミレス監督は全幅の信頼を寄せる。「彼は僕が何を考えているかを理解してくれている。英語の理解という面でもハイレベル」。丸山通訳にとっても、来季もペアを組む指揮官との仕事は誇りだ。「どんな時でも絶対に取り乱さない。心が強いと感じる。監督を尊敬していますし、僕もそうやって生きたい」。言語の違いを埋める、通じ合う「心」が、チームに来季のさらなる前進をもたらす。

 ◆丸山 剛史(まるやま・つよし)1976年(昭51)9月29日生まれの41歳。大学から約10年間米国で生活。帰国後、会社員を経て14年からラグビートップリーグのキヤノンで通訳の仕事を始めた。16年にDeNAに入社。横浜市出身で幼少期は前身・大洋のファンクラブに入り、年10回は横浜スタジアムに足を運んでいた。

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2017年12月25日のニュース