「推定」にモヤモヤ…透明性ある野球界にするため全選手の年俸公開を

[ 2017年12月21日 11:40 ]

契約更改し、会見する巨人・山口俊
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 【オヤジのぴりから調】大幅昇給を勝ち取る選手がいれば、泣く泣く減俸をのんでサインする選手もいる。明暗を分けるプロ野球契約更改。記者としてはむなしさを感じる季節でもある。

 わが年収の何十年分も一気に昇給する選手がうらやましいのもあるが、それは天賦の才と努力の差と割り切れる。選手の年俸額に「推定」をつけなければならないことにモヤモヤするのだ。

 なかには正直に公表する選手もいるが、たいていは選手に「大台は超えた?」「倍増は?」と探りを入れておおよその金額を出し、球団の交渉担当者に確認して「推定金額」をはじき出す。

 選手と球団がその気になれば、ごまかすのは簡単。他の選手との兼ね合いがあるから、球団は低めに誘導したい。選手が見えを張って高く思わせようとしても、球団がブレーキをかける。

 「推定」は「少なくともこれだけはある」という金額なのである。

 FA移籍選手の年俸も同様。昨オフDeNAから巨人に移った山口俊なんて8000万円だと思っていたら、2億3000万円だった。あくまでどっちも推定だけど。

 フリーエージェント規約第7条(選手契約の条件)では、FA移籍1年目の年俸は旧年俸を超えることができないとしながら「ただし、球団が当該選手の前参稼報酬年額及び稼働成績に関する特別な事情をコミッショナーに文書で申請し、コミッショナーがこれを認めた場合は、本条の制限を超える参稼報酬年額で選手契約を締結することができる」とある。

 山口俊の場合は、DeNA最終年の年俸8000万円が「特別な事情」で2億3000万円に跳ね上がった。つまり、なんでもありなのである。

 それが分かったのは、7月に都内の病院でトラブルを起こし、罰金と減俸合わせて1億円を超えるとみられる処分を受けてから。トラブルがなければ「特別な事情」はやぶの中だった。

 1993年オフに中日からFA移籍した落合博満の推定年俸3億6000万円が実は4億5000万円、96年オフに西武からFAで移った清原和博の4億5000万円と推定されていた巨人時代の最高年俸が6億円だったことも分かっている。

 取材が甘いと言われたら甘んじて受け入れるしかないが、隠し立てするのはもうやめようよ。透明性のあるプロ野球界にするために、まずは全選手の年俸公開から。11月27日に就任した元証券マンの斉藤惇・新コミッショナーにお願いしたい。(特別編集委員・永瀬郷太郎)

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2017年12月21日のニュース