【斎藤隆氏】ダル移籍決まらぬ背景に「代理人ボラス氏待ち」

[ 2017年12月21日 09:45 ]

メジャーリーグ恒例のウインターミーティング。クリスマスツリーの飾られたホールにはたくさんの球界関係者が集まる
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 今月11日からフロリダ州レークブエナビスタで開催されたウインターミーティングに今年も参加しました。直前に大谷のエンゼルス入団が決まり、次はダルビッシュら大物FA選手の移籍が一気に決まると予想されていましたが、全体的に動きが遅く、静かなウインターミーティングで4日間の日程を終了。球界関係者は「ボラスが動かないと、市場は動かない」と口をそろえていました。

 敏腕代理人で知られるスコット・ボラス氏は今オフ、アリエッタ、J・D・マルティネス、ホスマーら、多くの大物FA選手を抱えており、ほとんどが未契約。別の代理人が安値で選手の契約を交わすと、同等の評価を受けている選手の相場が決まってしまう。ある意味、「相場」をつくるのは代理人なので、ボラス氏が高額契約を勝ち取って相場を上げるのを待っているのでしょう。投手のFA市場では、ダルビッシュとアリエッタがトップランク。動かない理由として、代理人同士の駆け引きがあるのです。

 パドレスはヤンキース、フィリーズとの間で2件の交換トレードを成立させましたが、今回、勉強になったのは米国のトレードの奥の深さです。日本なら議論になるのは「誰を獲るか」でしょう。しかし、米国では「誰を出すか」。相手の球団が欲しがっている選手を出すことができるのか。会議にも参加させてもらいましたが、多数決で解決するような簡単な問題ではありませんでした。

 メジャーは傘下に3A、2A、1A(3チーム)、ルーキーとあり、いわば「7軍」があるようなもので、ダイヤの原石も眠っている。その選手を発掘したスカウトは、たとえ会議で「14対1」で放出に賛成だったとしても、決して引かず、その選手の将来性を熱く訴える。まさにスカウト人生を懸けた姿でした。

 今回の開催都市はディズニーワールドに近く、会場のホテルも華やかなクリスマスムード一色でした。しかし、密室の中では、球団の思惑、代理人の駆け引き、スカウトの熱い思いなど、さまざまな感情が渦巻いています。来季の戦いはもう、12月からスタートしているのです。(パドレス球団アドバイザー)

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2017年12月21日のニュース