松坂、失われていない野球への情熱 マウンドに立つ舞台がどこであろうと

[ 2017年12月15日 10:45 ]

キャッチボールする松坂大輔投手
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 ソフトバンクの退団が決まった11月上旬だっただろうか。松坂大輔投手から連絡があった。「ソフトバンクで投げる姿を見せることができずに申し訳ございません」。その後に、10月末にブルペンで投げた映像も届いた。

 思えば、近年、連絡をもらう時には「申し訳ございません」の言葉ばかりだった気がする。15年8月に右肩の内視鏡手術をした後には「すみません。投げられるように…それだけです」と電話をもらった。私よりも、もっと関係の深い球界関係者はたくさんいる。その人たちすべてに、そういった連絡をしていたかと思うと、当時はかける言葉すら見つからなかった。

 日本のエースとして、西武で、日本代表で、そしてメジャーで投げ抜いてきた。弱音は聞いたことがないが、おそらく体は悲鳴を上げていたのだと思う。1度だけ「僕はここ数年、本当に体のどこも不安なく投げた試合はない。でも、チームに求められたら、投げられるのなら、マウンドに立つ」と話してくれたことは印象に残っている。だから、ソフトバンクでの3年間は、本人が一番苦しかったのだろう…としか言えない。その思いは周囲の誰も理解してあげることはできない。

 プロとして1軍で貢献できなかったことに対する批判は受けて当然のことだし、3年総額12億円(推定)をもらった選手ならば仕方はない。だが、過去の実績をも傷つけるような意見はおかしいと感じる。さらに、ファンの方々が言うのならまだしも、球界関係者からも「もう晩節を汚す姿は…」との声が聞こえてきたことには違和感をおぼえた。ファンの求める姿を見せられなくなる前に引退を決めるのも、自分の情熱が尽きるまで野球を続けるのも、すべては本人が決めることだ。彼の凄さや周囲への気配りを知っているはずの球界関係者が言うセリフではない。

 まだ野球への情熱は失われてはいない。ソフトバンク退団時に「またいつかグラウンドでファンの皆さま、チームメートに再会できることを信じて前を向き続けていきたいと思います」とコメントを残したのが証拠だ。

 技術的な細かいことは分からないが、ブルペンの映像を見る限り、しっかりと腕を振っていた。野球は世界各地で行われている。アジアだけ見ても、日本だけでなく韓国、台湾などにもプロリーグがある。独立リーグも日米にある。マウンドに立つ舞台がどこであろうと、吉報が届くことを期待して待ちたい。

(記者コラム・倉橋 憲史)

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2017年12月15日のニュース