【決断】西武・上本 第二の人生はブルペン捕手「僕を優勝旅行に連れてって」

[ 2017年12月10日 10:00 ]

西武の上本
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 11月23日に開催された西武のファン感謝イベント。上本はブルペン捕手としてオーストラリアのウインターリーグに派遣されたため、不参加だった。ビデオメッセージで登場。「今、カンガルーとコアラと遊んでいます。あとプラス、森友哉、中崎…じゃない、中塚、(高橋)光ちゃん。若手諸君、僕を優勝旅行に連れていってください」。「若い子に負けないように。特に栗山、中村、炭谷。ちゃんとやるように」。観衆から笑いと大きな拍手が起こった。

 プロ15年間、本職の捕手で一度も定位置を獲れなかったが、09〜11年に3年連続でサヨナラ打と勝負強かった。後輩にもいじられる明るいキャラクター。ファンにも愛された。

 今季は11試合出場のみでオフに構想外を通告された。「若い選手も出てきた。自分の中で正直よく頑張ったと思う」と引退を決断した。大きな財産と振り返ったのが西口(現1軍投手コーチ)の専属捕手で起用された11年。先発マスクでバッテリーを組んだ西口の登板試合は7勝1敗だった。

 「当時会話を交わしたことがほとんどない。電話番号も知らなかったし。毎回“初球どうしますか?”だけ。アウトローの直球がありえない角度できていた。僕は何もしてない」と笑う。会話はなくても18・44メートルの距離で大投手の球を受け続けた経験は何にも代え難い。「よく首を振られたけど、勝負球をうまく使ったら他の球種も気持ちよく投げてくれる。凄く勉強になった」と振り返る。

 球団から打診されたブルペン捕手のポスト。選手からの人望が厚く、首脳陣とのパイプ役でこれ以上ない人材だ。「今井は故障を乗り越えれば凄い投手になる」と太鼓判を押す。一方で気に掛けるのが、2軍でも登板機会が少ない投手たちだ。「好きで始めた野球なのにストライクも入らなくて苦しそうなんです」とつぶやき、続けた。

 「言い方は悪いけど“こいつ、厳しいんじゃないか”っていうやつが1軍で活躍してほしい。しょぼい僕がプロで15年もできた。君たちはもっとできるんだよって。少しでも手助けができれば」。言葉に熱がこもる。第二の人生は縁の下の力持ちでチームを支える。 (平尾 類)

 ◆上本 達之(うえもと・たつゆき)1980年(昭55)11月8日、山口県宇部市生まれの37歳。宇部商3年夏に甲子園出場。2回戦の豊田大谷戦でサヨナラボークで敗退した。協和発酵を経て02年ドラフト6巡目で西武入団。16年は代打の切り札として打率・307、1本塁打と活躍した。1メートル86、93キロ。右投げ左打ち。

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