工藤監督 流れ変えた“日本一”采配 ぶっつけ復帰の柳田1番起用

[ 2017年11月5日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2017第6戦   ソフトバンク4―3DeNA ( 2017年11月4日    ヤフオクドーム )

<ソ・D>日本シリーズを制して胴上げされる工藤監督
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 劇的、王座奪還!ソフトバンクがDeNAに延長11回、4―3でサヨナラ勝ちし、対戦成績4勝2敗で2年ぶり8度目(南海、ダイエー時代を含む)のシリーズ制覇を果たした。サヨナラでの日本一決定は29年ぶり4度目。川島慶三内野手(34)が決着の安打を放った。工藤公康監督(54)は監督2度目、現役時代を含めれば王貞治球団会長(77)に並ぶ通算13度目の栄冠に酔いしれた。

 金色の紙吹雪の舞うグラウンド。工藤監督は歓喜するナインと一人一人、抱擁していく。大きな瞳に、リーグ制覇でも浮かんだ熱いものが込み上げる。マウンド後方で7度、舞った背番号81は、喜びと解放感をかみしめた。

 「決まった瞬間は頭は真っ白で、日本一になったんだ、と。もう泣かないぞと思ったけど、苦しかったことが頭をよぎって涙してしまいました。現役時代を含めてこんなに興奮した日本シリーズはありません」

 日本一への第1手。CSファイナルS第4戦後のコーチ会議で右脇腹痛の柳田を第5戦から復帰させることが決まった。問題はどこで使うかだ。実戦なしのぶっつけ。痛みがぶり返した際に代役の城所を出せる1番が提案された。工藤監督は戸惑った。今季一度も使わなかった作戦で、しかも大一番だ。ただ、信頼するコーチの顔を見渡し、決めた。「それで行こう」

 日本シリーズも継続し、柳田は復帰戦からシリーズ第3戦まで4試合連続で初回先頭打者安打で先制のホームを踏んだ。ペナントレースで先行すると73勝9敗だったチームにはまった「ひょうたんから駒打線」だった。

 采配のはまる予兆はあった。10月26日のドラフト会議。早実・清宮に始まり、3回連続外した指揮官は「全部当たった」と笑った。半透明の箱の中で目星を付けた封筒は全て先に取られ、当たりクジだったという。うそのような本当の話だ。

 連敗で迎えたCSファイナルS第3戦、工藤監督は円陣で「バカになってやろうぜ」と声を出し、3連勝を呼んだ。今季、感情を見せないように一喜一憂を避けてきた男が、心を解き放った。2連敗で迎えたこの日もまたDeNAの勢いをはね返すべく再び、円陣へ登場した。「周りを見ろ、周りを。(横浜スタジアムとは)正反対だ。さあ100万人のファンが見ているぞ。後悔のないように。野球は楽しくだ!今日は勝つぞ〜!」。絶叫し、左の拳を突き上げた。

 流れが変わるのは経験している。86年の西武―広島の日本シリーズ。3敗1分けの第5戦でリリーフし、延長12回にサヨナラ打を放った。満面の笑みのまま戻ったロッカーでは批判めいた言葉も浴びた。「なんで胴上げを見るために広島まで行くんだよ」。第6戦以降は広島市民球場。3連勝は誰も考えなかった。ただ、そこにいたのは全く別のチームだ。「一つ勝てばいいのに何しているんだろう」。当時23歳の左腕は、マウンドで流れが変わるのを感じていた。

 選手と監督で通算16度目のシリーズ。選手の経験を出し、指導者としての変化も見せ、楽天に続きDeNAの下克上を阻止した。「今までにない、最高の気分。選手のみんな、ありがとう!」。涙は乾き、いつもの笑顔に戻った。王会長に並ぶ史上3位タイ13度目の日本一。「シリーズに愛された男」はやはり土壇場で強かった。 (福浦 健太郎)

 ≪史上3位タイ≫工藤監督は1年目の15年に次いで2度目のV。チームでは鶴岡、王、秋山各監督に並ぶ最多回数になった。工藤監督は選手時代に11度シリーズ優勝を経験しており、監督の2度を合わせ13度目の日本一。選手、監督両方の優勝回数では、長嶋監督の12度を抜いて、森監督の17度、川上監督の15度に次いで、王監督と並ぶ史上3位タイに浮上した。

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