【石井一久 シリーズ大分析】山崎康“高低の妙”で2度のピンチ脱出

[ 2017年11月3日 10:50 ]

SMBC日本シリーズ第5戦   DeNA5―4ソフトバンク ( 2017年11月2日    横浜 )

8回2死一、二塁 柳田はハーフスイングの空振り三振に倒れる
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 クローザーは、たとえ3安打されても本塁を踏ませなければいい。本紙評論家の石井一久氏(44)は、DeNAの守護神・山崎康の配球に注目。救援した8回2死一、二塁では三振を狙った配球、9回は絶対に長打を許さない配球で、4つのアウトを取ったことを評価した。4番・筒香も復活し、第6戦以降に期待を抱かせる試合だったと分析した。

 山崎康は1点リードの9回に3安打されたが、同点を許すことはなかった。なぜか。全て単打だったからだ。決して偶然ではなく、仮に打たれても単打という配球だった。

 1死一塁で内川を迎え、初球は内角低め直球でボール、2球目は外角低めのツーシーム。ボテボテの打球が三遊間を抜けたが、一、二塁止まりだった。このシリーズで、DeNA投手陣が内川に打たれている球は、やや抜けた高めの半速球が多かった。そこは、一番バットコントロールがしやすいゾーン。DeNAバッテリーは長打警戒で、とにかく球を上げさせないように低めのゾーンで攻めた。

 続く中村晃は3球連続の外角低めで空振り三振。2死一、二塁となり、松田に再び三遊間に転がされた(遊撃内野安打)が、ここでも走者は一つ進塁しただけ。最後の明石も一ゴロ。この回、嶺井はミットで何度も地面を叩いて低めを意識させた。中村晃の三振以外は全てゴロ。3安打されたとはいえ、内野の頭を越える打球は1本もなかった。

 ツーシームを得意とし、元々ゴロ率の高い山崎康。しかし、今季初のイニングまたぎで登板した8回2死一、二塁では違った。柳田に対し、三振を狙った配球。捕手の嶺井は初球、2球目、5球目と、いずれも中腰に構えて高めのつり球を要求した。だから、最後のツーシームはワンバウンドだったが、柳田のバットは回り、空振り三振となった。

 高低を使って三振を狙った8回の山崎康と、絶対に打球を上げないように低めを突いた9回の山崎康。状況に応じた2つの配球で1点差を守り切った。

 ◆中堅返しが語る筒香復調

 DeNAにとって、何と言っても筒香に当たりが出たのが大きい。第4戦まで本塁打、打点ともに0。第2戦で左腕・嘉弥真のスライダーを中心とする外角攻めに三振を喫してから、体が開くような打撃が目立っていた。

 活路を見いだしたのは、中堅から左への打球。4回2死二塁ではバンデンハークの真ん中高めの153キロ直球を中堅左へ運び、逆転2ランとした。結果が出ないと、焦りから強引に引っ張ってしまうが、しっかり壁をつくり、押し込むように中堅方向へ強い打球を運んだ。引っ張らないでも長打が打てる。これが筒香の良さだ。

 6回1死一、二塁でも左腕モイネロのチェンジアップに対し、スライス回転の打球で中越え二塁打。今季、筒香の長打の打球方向を見ると中堅が37・9%(右34・5%、左27・6%)。左打者の本塁打上位5人の中でも最も高い数字だ。シーズン中から内角攻めや、外角の出し入れなど、厳しい攻めをされているので、自然とゲームの中で対応力が身についている。もちろん、それができる技術の高さがある。

 ◆走塁そつなし ソフトも手は尽くした

 再び福岡に戻る第6戦。ソフトバンクは守備のミスが一つ出て敗れたが、攻撃のリズムは悪くない。初回に1死から安打で出塁した今宮はデスパイネが倒れると、4番・内川の初球に二盗に成功。盗塁が十分に考えられる場面で、1球目に走ってくれると、打者も早く自分の間合いに入れるのでリズムをつくりやすい。その結果が先制の右翼線二塁打。5回にも無死一塁で今宮が初球にバントを決めると、二塁走者の柳田はワンバウンドを見逃さず、すかさず三塁を陥れた。本来の緻密な野球はできている。

 一方、DeNAも今シリーズ初めて1番・桑原で出て、クリーンアップが還すという「形」ができた。初戦、2戦とは明らかに違う戦いになると思う。

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2017年11月3日のニュース