【シリーズ大分析】若菜嘉晴氏 逆転劇呼んだ柳田の読みと強い意志

[ 2017年10月30日 09:05 ]

SMBC日本シリーズ2017第2戦   ソフトバンク4―3DeNA ( 2017年10月29日    ヤフオクドーム )

<ソ・D>7回1死三塁、柳田は中前適時打を放つ
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 ソフトバンクの7回の逆転劇を呼んだのは、DeNAの変則守備隊形と配球をイメージした柳田の打撃だったと、スポニチ本紙評論家の若菜嘉晴氏(63)は分析した。2点ビハインドの1死三塁。引っ張っての内野ゴロでも1点は入る状況だったが、あえて同点、逆転を狙い、センター返しの適時打を放った。鉄壁の守備陣とともに、ソフトバンクの大舞台での経験値の高さが光った。

 1点ならOKのDeNAと、1点で終わりたくなかった柳田。そんなせめぎ合いの中で生まれた中前打だった。

 2点リードの7回1死三塁。打席に柳田を迎え、DeNA内野陣は変形のシフトを敷いた。一、二塁手は定位置よりやや後ろで、遊撃、三塁手が前進守備。柳田が引っ張れば1点が入り、2―3で2死走者なしとなる。DeNA側はこれでOK。逆方向におっつけてくれば前進守備の網にかかり、無失点でしのげる可能性も出てくる。それを狙って左腕・砂田は、対角線上の外角に投げてくる。柳田が、ここまで配球を読むことは可能だった。

 初球はスライダーで、2球目は外角直球。柳田は踏み込んで中前打を放った。引っ張るか、犠飛では1点だけで終わってしまう。シフトに捕らえられれば0点。逆転するために必要なのは、2番以降につなぐこと。柳田はヒットゾーンの広がった中堅から逆方向への強い打球を意識して、自らベース上に生きた。そこから失策、四球…。やはり起点になるのはこの男だった。

 初回の先制点も、今永の初球の直球を捉えた右前打から生まれたもの。DeNAバッテリーのこの1球は不用意だった。性格も考慮すれば、初球から積極的に打ってくるのは自明の理。ならばボールから入るか、変化球か…。確かに初回の初球の入り方は難しい。捕手にとって永遠の課題だ。ただ、この場合は先頭打者ではなく「走者のいる場面の4番打者」ぐらいの意識、慎重さが必要だった。ストップ・ザ・柳田。背番号9を止めなければ、ソフトバンクは一気に走る。

 ▼DeNA・ラミレス監督 彼(柳田)は引っ張る打球が多い。だから引っ張る方(一、二塁)は後ろ、逆方向(三塁、遊撃)は前へ。その方がアウトにできる可能性は高いと思ったが、残念ながらセンター前に打たれた。

 ◆光った2番手・嘉弥真“筒香キラー”に名乗り

 投手陣で光ったのは2番手・嘉弥真だった。6回1死一塁、打席に筒香を迎えた場面で左対左のワンポイントリリーフ。6球は全て外角で、最後は大きく逃げていく131キロのスライダーで空振り三振に仕留めた。

 昨季までソフトバンクに在籍した巨人・森福と同タイプだが、さらにスピードが速い。セ・リーグにはいない左腕だろう。結果的に3番手の森が続く宮崎に2ランを浴びたが、その首位打者が当たりだしただけに、嘉弥真が「筒香キラー」になるかは第3戦以降のシリーズの行方を左右すると言っていい。

 守備でも筒香の前で打線を切ったプレーが光った。ともに3番・ロペスの打球。4回無死では松田、8回1死では今宮がそれぞれ好守でアウトにした。無走者か、走者を置いて筒香を迎えるのか。ともに1点リードの場面だっただけに、走者を置いて一発を浴びれば逆転2ランとなる。投手のプレッシャーは大きく違う。今季、ソフトバンクのチーム守備率はリーグトップの・993。短期決戦では、一つの守備から流れが生まれることも決して少なくない。

 ▼ソフトバンク・嘉弥真 最後の球はいい所に行ってくれた。ボールも操れていたし、一人を全力で抑えにいった。

 ◆まだ余力あった今永 もう1イニング続投なかったか

 DeNAは先発・今永が2回以降は立ち直っただけに、痛い星を落とした。初回は柳田、デスパイネに直球を打たれたが、2回からはカーブを増やして緩急をつけた。2、3回の打者9人のうち5人の初球がカーブ。3回のデスパイネは1、2球目とカーブを続け、4球目に再びカーブで三ゴロに仕留めるという念の入れようだった。

 ソフトバンクは楽天とのCSファイナルSで塩見、辛島の左腕に連敗。緩急が有効だと分かり、石田、浜口という先発左腕がまだ控えているDeNAにはプラス材料だろう。ただ、この日の今永は6回を終えて116球。7回は2打席連続三振の8番・江川からの打順だっただけに、もう1イニングの続投はなかったか。右投手を出せば左の代打が出てくる。継投のタイミングも勝敗を分けたように思う。

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