【東尾修 シリーズ大分析】ラミ監督、継投躊躇させた「駒の違い」

[ 2017年10月29日 10:20 ]

SMBC日本シリーズ第1戦   DeNA1―10ソフトバンク ( 2017年10月28日    ヤフオクD )

5回無死三塁、デスパイネ(奥)に中前適時打を浴び、マウンドを叩いて悔しがる井納
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 ラミマジックは不発に終わった。第1戦の勝敗を決めた5回の大量7失点。本紙評論家の東尾修氏(67)は、3点差に広がった1死一塁の場面で先発・井納からチェンジすべきだったと分析した。采配がズバリと的中したCSファイナルSと違い、ラミレス監督の継投策が遅れたことが大敗の引き金に。ソフトバンクのデスパイネ、DeNAのロペスと両3番助っ人の差も浮き彫りとなった。

 ラミレス監督の胸中には、ほんのわずかな躊躇(ちゅうちょ)があったのかもしれない。5回、指揮官は1死満塁の場面で先発・井納から左腕の田中健に代えた。打席は2回に2ランを放った左の長谷川勇だったが、代打・川島を送られて押し出し四球。さらに押し出し、2本の適時打で大量失点し、この段階で試合の大勢はほぼ決してしまった。

 1点を奪われて1―4となった直後、無死一塁で内川は右飛。しかし、打球は芯で捉えた強烈なものだった。3巡目。井納はつかまりかけている。1死一塁で次打者は左の中村晃。まだ3点差という状況を考えても、左腕に代えるならここで投入すべきだった。田中健はシーズンの防御率が4・47。CSファイナルSでは登板が1試合もなかった。満塁での起用は酷だったし、1死一塁ならプレッシャーの感じ方も違う。結果も変わっていたかもしれない。

 CSでは思い切った継投がズバリとはまったラミレス監督だが、一瞬の躊躇の裏にはCSとの「駒の違い」があった。ファイナルSは2試合連続で雨天中止。その結果、今永や浜口といった先発投手のジョーカー的な起用が可能になった。この日は日本シリーズ初戦。今後の先発ローテーションも決まっている中で、現状の中継ぎ左腕の中で誰をマウンドに送るか――。田中健か、砂田かエスコバーか。勝ちパターンではなかったが、ビハインドはまだ3点。微妙な状況での迷いが井納の続投となり、満塁の場面で田中健の投入という後手につながった。マジックを繰り出そうにも、その手には「タネ」がなかった。

 ◆勝敗分けた“助っ人3番”のつなぐ意識

 その井納を降板へと追い込んだソフトバンク打線の「核」はデスパイネだった。3安打2打点。特に光ったのが5回無死三塁での中前打だ。2ボール2ストライクと追い込まれた場面で、強振をせずに基本であるセンター返しを意識した。だからこそ低めに落ちるフォークに対応できた。一方で初回の先制打は、思い切り引っ張って左翼線二塁打。硬軟織り交ぜた打撃は好調な証拠と言っていい。

 同じ3番を打つDeNAのロペスは対照的だった。4打数無安打で、3点を追う3回1死一塁では外角ボール球のフォークに空振り三振。千賀は力みからかフォークが引っかかり「お化け」の面影がなかった。その球を追いかけて相手を助けてしまったロペスと、逆に相手を追い込んだデスパイネ。2人の差も勝敗の分水嶺だった。

 DeNAはCSファイナルSの第4、5戦でも初回に先制されながら、逆転で勝利した。いずれも早い回に得点を返したからこそ。それがこの日でいえば3回だった。千賀から見れば、2点の追加点をもらった直後で相手は1番打者から。ここを無失点に抑え、一気にリズムに乗った。

 ◆初回、柳田の安打が井納狂わせた

 終わってみれば大差となったが、始まりは初回の1番・柳田の安打から。3球全て内角を攻められ、1ボール1ストライクから133キロの高めスライダーを中前打。第1戦の初回、先頭打者。当然のように厳しく攻められたが、詰まりながらも運ぶのは高い技術があってこそ。立ち上がりで緊張のあった井納に大きなダメージを与えた一打で、その存在感は1番を打つことで増している。4番・内川も無安打だったが3打席目までいずれも芯で捉えるなど、打線は状態の良さが際立っていた。

 29日の第2戦の結果次第では、ソフトバンクが一気に走る可能性もある。DeNAはCSでの勢いが消えかけている中で、やはり先制点が欲しい。打破するのは誰か。やはりロペスであり、筒香だと思う。

 《柳田に内角攻め ベルト付近有効》 DeNA投手陣は柳田に内角攻めをしてきたが、今季のコース別打率を見ると、内角高めは.438と好成績を残している。詰まらそうとしても力で運ぶパワーもある。内角のゾーンでは、窮屈なスイングになるベルト付近が打率.200と苦手としている。

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2017年10月29日のニュース