藤浪 苦悩の1年…試合中に衝撃告白「直球のリリースの感覚が無い」

[ 2017年10月20日 12:20 ]

フェニックス・リーグが雨天中止となり、石崎(左)、青柳(右)と笑顔で走りこむ藤浪
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 【金本阪神2年目の検証(2)】若きエースは苦しみ、もがき、必死に「出口」を探した。先発の柱として期待された阪神・藤浪の苦闘は、今季初登板4月4日のヤクルト戦から始まった。

 本拠地開幕のマウンドで、5回2失点ながら9四死球。今季の“象徴”となってしまったのが、5回に畠山の左肩へ死球をぶつけ、両軍入れ乱れての大乱闘に発展した場面。怒声が飛び交う中、マウンドに立ち尽くす右腕は、試合途中に捕手・梅野に告白した。

 「直球のリリースの感覚が無いんです…」

 衝撃的な言葉とともに、高卒1年目から主戦を務めてきた23歳は、自身の投球フォームを模索する長い“旅”に出ることになる。

 2度目の先発だった4月13日DeNA戦こそ8回1失点で今季初勝利を挙げたものの、以降は4試合連続で5四死球以上を献上。5月27日にはプロ5年目にして初めて不振で出場選手登録を外れ、無期限での2軍再調整を言い渡された。

 「それも多少、あるかもしれません」と明かしたように、開幕直前の3月下旬までWBC日本代表として戦い、滑りやすい国際球を手にしていたことも手元を狂わせた要因の一つだろう。元来、実戦重視の調整を行うが、日本代表では中継ぎ待機となり、十分実戦を積めずに開幕を迎えたことも重なった。

 2カ月に及んだ2軍生活では、リリースポイントの安定を目指し、フォームの修正に着手。基本に立ち返り、キャッチボール、ブルペン投球から再起を図った。だが、2軍でも一進一退の投球内容は続き、7月2日のウエスタンリーグ・中日戦では5回に危険球退場と、「光」は、なかなか見えてこなかった。

 その後、約3週間、実戦から離れた時期に藤浪は“動いた”。7月中旬の球宴休みを利用して単身、東京へ向かったのだ。

 「無期限調整ということだったので、思い切って、時間をかけてしっかりやろうと」

 訪れたのは、米国の外科医で、全米認定アスレティックトレーナーでもある酒井リズ智子氏のもと。3月に開催されたWBC日本代表でチームメートだった青木宣親(メッツ)の紹介で、本格的な動作解析を依頼した。

 スペシャリストの分析のもと、改善点として浮かび上がったのは、投球の際に骨盤が傾き、右膝が曲がることで体が開いてしまう悪癖。右打者の内角へボールが抜ける原因でもあり「前から(膝の曲がりが)弱点だと思っていたので、自分の中で、そこを直していけばいい、という確信を持てました」と復調への確かな材料を得た。

 それでも、82日ぶりの1軍登板となった8月16日の広島戦で4回2/37四死球3失点KOされるなど、再昇格後も4試合で0勝2敗。今季は3勝5敗、防御率4・12と自己ワーストの成績に終わった。

 求める理想のフォームの完成は、まだ道半ばだろう。「いつか、“あの1年があったから”と言えるように、自分の力でやっていかないといけない」。何度も壁にぶつかり、立ち上がってきた1年を無駄にはしない。(遠藤 礼)

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2017年10月20日のニュース