金本阪神、躍進の理由は「勝利の方程式」確立 首脳陣も成長“コーチが発案、監督が決断”

[ 2017年10月19日 10:20 ]

セーブ王を獲得した阪神・ドリス
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 【金本阪神 2年目の検証(1)】2年目の金本阪神は17日にCSファーストS敗退が決まり、2017年シーズンを終えた。借金12で4位に終わった昨季から78勝61敗4分けの貯金17で2位に躍進。チームとして昨季から成長を遂げた点、そしてV奪回に足りなかった点――を「金本阪神 2年目の検証」と題し、連載する。

 「挑む」戦いが終わった。12年ぶりのリーグ優勝には手が届かなかった。ただ確実に、頂点へ前進したことも確かだ。若手の成長、中堅の意地、主力の躍動…。昨季4位から2位に躍進した要因は、いくつも数え上げることができる。中でも最大の要因が「勝利の方程式」の確立だろう。

 今季の阪神には「勝つ形」があった。合言葉は「6回までにリード」――。金本監督は開幕から7回以降の勝ちパターンとして桑原、マテオ、ドリスの3投手を固定。3人の働きで6回までにリードした試合は63試合で56勝4敗3分け、勝率・933。昨季の56試合47勝8敗1分け、勝率・855を大きく上回った。桑原とマテオがともに最優秀中継ぎ投手、ドリスが最多セーブと3人揃ってタイトルを獲得。05年のリーグ優勝の原動力となった「JFK」に勝るとも劣らない必勝トリオだった。

 入念な構想、準備、計画によって生まれた勝ちパターンだった。今年の年頭、本紙インタビューで金本監督が構想したのは相手、球場に関係なく戦う「自分たちの野球」。その根幹を成す要素に、リリーフ陣の整備を挙げた。昨季は全76敗中、リリーフで負けた試合は16あり、そこに「勝つ形」を見いだした。JFK、中日の浅尾&岩瀬…。近年の常勝軍団が擁した鉄壁の救援陣を、自軍にも採り入れようと考えた。

 だがその役割を担える投手は昨オフ時点でマテオだけ。そこで、その一角に前年まで在籍2年間で1軍登板6試合のみだった桑原を抜てきした。球威抜群の直球、左打者の内角をえぐるスライダーに適性を見いだしての起用だった。そしてドリスだ。昨季終盤に右肘手術を受け、戦力外候補だった右腕を、指揮官だけはあきらめていなかった。ドミニカ共和国まで関係者を派遣して術後の経過をチェック。今春キャンプでテストし、再契約を決めた。指揮官による2人の発掘がトリオ形成の基礎となった。

 計画的起用法も実った。首脳陣は開幕からシーズン中盤まで、中継ぎ陣、特に3投手の連投を「3」までと決めた。指揮官と香田投手コーチは開幕から表を作成し、常に3投手の球数、登板回数をチェック。勝負所の夏場を見据え8月20日の中日戦までその禁を解くことはなかった。その結果、3投手に高橋、岩崎を加えた5投手が60試合以上登板という「球界史上初」を生み、シーズンを通じたフル回転を可能とした。

 「勝利の方程式」確立を筆頭に選手が結果を出した裏には、首脳陣の成長もあった。今季、勝利後の監督会見では「片岡コーチの発案」「香田コーチと話し合って」「平野コーチと取り組んできた成果」など、勝因を語る際に各コーチ陣の功績を称える発言が目立った。「ベンチの力」も勝因の一つだった。

 思い起こせば、昨年末。金本監督は就任1年目の采配を振り返り「(来季は采配も)違ってくるかもしれん。結局、一番何が分かったかと言うと、コーチの意見を参考にして譲るところは譲ろうと思っていたけど、コーチも迷って意見が分かれること。これが一番分かった。そういうのは俺が(決めて)言わないといけないのかなと」と決断力の重要性を再認識していた。

 この日のオーナー報告後の会見でも2年目の采配について「(迷った場面は)数かぎりないですね。みんなが迷うところの決断が難しかった」と言及。その上で「でもコーチングスタッフがフォローしてくれて、背中を押してくれて、アドバイスをくれたり。“監督こうしよう”と言ってくれたので助けられた印象が強い」と付け加えた。

 コーチ陣が発案し、監督が決断する――。指揮官が監督就任時に掲げた理想的な首脳陣のあり方だった。2年目の金本阪神は若手はもちろん、首脳陣も成長を遂げた1年だったと言える。今年の反省を踏まえた来季の采配は、さらに円熟味を増すはずだ。 (惟任 貴信)

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2017年10月19日のニュース