日本ハム・飯山 「野球の神様」に愛された男の再出発

[ 2017年10月18日 10:13 ]

<日・オ>仲間に胴上げされる飯山
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 長くプロ野球を担当していると「野球の神様」の存在を感じる瞬間がある。日本ハム・飯山裕志内野手(38)の引退試合だった10月3日のオリックス戦(札幌ドーム)。最後の打者だった大城の打球は8回守備から途中出場していた飯山が守るショートに飛んだ。しっかりとゴロを捕球し、矢のような球を一塁に送りゲームセットとなった。

 今回の引退試合で、現役を退く飯山の守備力が全く衰えていないことを近くで実感した選手が2人いる。まずは2年後輩の36歳、田中賢だ。飯山とともに8回守備から二塁で途中出場。同回で1死一、二塁から宗のセカンドへのゴロを捕球し、二塁ベースカバーに入った飯山と4―6―3の併殺を完成させた。長くチームを支えてきたベテラン両者による併殺。札幌ドームのスタンドからは大歓声が降り注いだ。

 実はこの併殺で田中賢はベテランらしからぬ小さなミスを犯していた。ゴロを捕球後、高揚と緊張からか飯山へのトスの軌道が高く、山なりになってしまった。打者走者は俊足の宗。一瞬のロスも許されない。飯山は背伸びするように田中賢からの送球を捕球し、すばやく一塁に転送した。間一髪のタイミングで併殺が完成。引退セレモニーの花束贈呈では人目もはばからず号泣した田中賢は「飯山さんと“最後に(併殺を)取りたいですね”と話していた。最後まで自分をカバーしてくれました」と感謝した。

 もう一人は一塁を守っていた中田だ。8回の併殺、そして9回と、遊撃の飯山から2度の送球を受けて「最後の最後まで生きた球を投げてきた」と振り返る。難しい体勢でも強く、安定した軌道で送球が来る。「球の強さがすごいし、今の若手で同じぐらいに強い選手はいない。(飯山)裕志さんと(金子)誠さんは別格です」とまで言う。

 来季からは2軍のコーチとして後進の指導にあたる飯山。12日に千葉・鎌ケ谷でスタートした秋季練習では「初仕事」として中島、杉谷らにノックも打った。「職人」のような、そして野球の神様に愛されるような名選手を育ててほしい。(記者コラム・山田 忠範)

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