大谷「僕から“無理です”とは言わない」魂の124球さよなら完封

[ 2017年10月5日 05:33 ]

パ・リーグ   日本ハム3―0オリックス ( 2017年10月4日    札幌ドーム )

<日・オ>北海道の地図が描かれたマウンドで快投する大谷
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 4番・ピッチャー、大谷――。今季終了後に大リーグに挑戦する意思を固めている日本ハム・大谷翔平投手(23)が、4日のオリックス戦に5年目で初となる形で先発出場し、投げて2安打10奪三振完封、打って1安打を記録した。今季本拠地最終戦。メジャー移籍が実現すれば日本では最後となる「リアル二刀流」の勇姿を、これでもかと見せつけた。

 3―0の9回1死。連続四球を与えた大谷の周りに輪ができた。疲労は限界だったが、最後まで強気だった。

 「(投手コーチの)吉井さんは何回も来ていたけど、僕から“無理です”とは言わないと言っていた。“見て無理なら代えてもらって構わない”と話していた」。輪が解ける。背番号11がマウンドに残った。初球、この試合124球目。代打・杉本にこん身の158キロを投げ込む。二ゴロ併殺、試合終了。耳をつんざくような大歓声が響き渡った。

 今季初めてのDH解除。しかも4番。「“やるかもしれないよ”とは言われていた。基本的にやることは変わらない」と冷静に臨み、4回まで無安打に抑えた。直球は最速162キロに達し、160キロ台を7球計測しての今季初完封。打っては4回に中前打で出塁し、4連打での3得点を呼んだ。

 残す公式戦は5、9日の敵地2試合。これが今季最終登板になるのは自明だった。今オフに希望通りメジャー移籍を果たすことになれば、日本ラスト登板で、本拠地最後の試合。父・徹さん(55)、母・加代子さん(54)も観戦に訪れた。海を渡る意思はまだ公表していないため「そこに関しては別にない」と口を閉ざしたが、期する思いはあった。

 12年12月25日。入団会見後にユニホーム姿を初めて披露したのが札幌ドームだった。二刀流でのプロ挑戦。「やる以上は一投一打に一生懸命取り組む」と誓った。16年10月16日、CSでプロ野球史上最速の165キロを叩き出したのもここ。言葉通り精進し続けた。

 今季は故障に泣き、苦しんだ。だからこそ「友」の気持ちに寄り添うこともできた。8月23日のDeNA戦で同学年で親交のある広島・鈴木が守備で右足の大ケガを負った。「もちろん(連絡を)しました」。戦列を離れる悔しさは痛いほど分かる。「毎日野球をできる環境はない。うまくなるチャンスだと思う。一日でも多く野球をやっていたい」。野球ができる喜びを再認識した。

 向上心は尽きない。「まだてっぺんは見えていない。自分の限界が分からない。次にやるべきことを一つ一つつぶしていくだけ」。プロ野球66年ぶりの「4番・投手」ですらステップボード。伝説が、新たな伝説の幕を開ける。 (柳原 直之)

 ≪阪神・藤村以来66年ぶり≫大谷(日)が2安打10奪三振で完封勝利。自身完封勝利は通算7度目だが、被安打2本は16年9月28日西武戦の1本に次ぐ少ない本数になった。この日はプロ入り初めて4番・投手で先発出場し打っては1安打。2リーグ制後、4番・投手で先発したのは51年10月7日大洋戦の藤村富(神)以来66年ぶり2人目。パでは大谷が初めてだ。また、4番・投手初試合で勝利&安打は1リーグ時代の48年5月20日急映戦で前記藤村富がマークして以来7人目。うち完封で飾ったのは40年10月12日阪神戦の浅野(阪急)、44年5月21日阪急戦の内藤(朝日)に次ぎ3人目。

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