「しんどい、なんて思わない」オリ岸田 待ち望まれる1軍での躍動

[ 2017年9月10日 09:30 ]

オリックス・岸田
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 「あー、悔しいッス。落ちましたわー。絶対また上(1軍)でメシ行きましょうね!」

 オリックスの岸田護投手(36)が、こぼした言葉だ。8月23日に、ほっともっと神戸で行われた日本ハム戦後のこと。駐車場に大きな荷物を抱えて現れると、車のトランクに道具を押し込みながら、悔しさを押し殺し気丈に振る舞った。

 8年ぶりの先発再挑戦で始まった今季は正念場が続く。昨季は春先から右肩痛の影響もあり16試合で防御率7・90。完全復活を目指し昨秋から50歳まで現役だった山本昌(元中日)やイチロー(マーリンズ)も取り組む「初動負荷トレーニング」を導入。柔軟性を含めて改善に努め、故障など肉体面の不安は解消されたのだが…。

 今季初先発した4月29日ソフトバンク戦では、気負いや重圧も重なって制球に苦しみ4四死球を与えるなど3回1失点で降板。2軍調整を命じられると、5月には再び中継ぎに配置転換された。「次に上がるとしたらロング要員だと思う」。そう話していたが、1軍のチーム事情もあり先発と中継ぎ、両方の可能性を模索。オリックス一筋12年目のベテランとしてプライドもあるはずだが、そんな思いを感じさせず、たび重なる調整法の変更にも文句一つ言わなかった。

 「僕が何か言うなんてことはないよ。しんどい、なんて思うことも何もない。求められたところでしっかり準備して、結果を出すだけだから」

 ムードメーカーで周囲を気遣う献身的な人柄は、チームメートやコーチ、スタッフ、球団関係者、報道陣からも好感を集める。その下地は野球がつくった。ヤンチャだった小学生時代の少年野球チームから履正社、東北福祉大と、岸田の人間形成の中心には学生時代の恩師の存在が常にある。

 「監督はみんなコワい人たちだったけどね。でも本当に僕らを思ってくれる人たち。大学を卒業したら就職しようと思っていたし、正直、自分がプロになれるなんて思ってもみなかった。僕の考えを尊重して後押ししてくれた母親の存在もそうだけど、今までの監督には感謝しかないです」

 06年の入団後、主に先発を務めて09年には10勝をマーク。救援でもセットアッパー、クローザーを担いチームに貢献してきた。今季先発1試合、救援1試合の計2試合で防御率4・50にとどまるが、背番号18が1軍マウンドで躍動する時をファンは待っている。(記者コラム・湯澤 涼)

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2017年9月10日のニュース