広陵・中村悔し涙「勝って記憶に残りたかった」試合後、プロ志望表明

[ 2017年8月24日 05:33 ]

第99回全国高校野球選手権最終日・決勝   広陵4―14花咲徳栄 ( 2017年8月23日    甲子園 )

<広陵・花咲徳栄>5回、花咲徳栄の猛攻を止めきれず、汗を拭う広陵・中村
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 最後の意地だった。9回1死一塁。広陵・中村は清水の146キロ直球を左翼線へはじき返した。19安打目で、6本目となる二塁打。最多安打と最多二塁打の大会記録に並んだ。

 「勝って記憶に残りたかった。満足はしていません」。4度目の決勝でも初優勝を逃し、悔し涙を流した。今大会初三振も喫したが、6本塁打、17打点、43塁打で大会記録を次々と塗り替え、打率は・679をマークした。

 大会中、中村の活躍を「まぐれ」と表現し続けてきた中井哲之監督だったが、この日は違った。「まぐれじゃない。広陵の3番です」。選手を決して褒めない指揮官からねぎらいの言葉をもらった。寮生活で野球に打ち込む先輩の意識の高さに「来る所を間違えた」と振り返る。1年夏に初めて背番号2をもらった時には「重圧で食事が喉を通らなかった」という。支えとなったのは中井監督の言葉だ。「(小林)誠司(現巨人)がした努力をおまえにできるか」。決勝で屈した10年前の借りを返すため、努力を重ねてたどり着いた甲子園。「(日本一の)夢はかなわなかったけど、少し恩返しができた」と感謝した。

 女手一つで育ててくれた母・啓子さん(44)への感謝も忘れない。小学校入学時からキャッチボールの相手をしてもらった。本塁打を打つたびに記念球を届けた。「本塁打は母さんとの約束。優勝できなくて悔しいけど感謝の気持ちを伝えたい」。観戦した啓子さんは「最高の夏でした」と声を震わせた。

 「夢はプロ野球選手」。小学校の卒業文集に将来の夢をこう書いた。あれから6年。試合後、プロ志望を表明した。「この悔しさを忘れず、プロの世界へ行きたい。球界を代表する捕手が目標。球界の記録をつくれるような選手になりたい」。奨成(しょうせい)という名前には「大きな夢に向かって成功をつかめるように」という意味が込められている。記録にも記憶にも残った夏。大志を抱く18歳がプロの荒波に飛び込む。 (吉仲 博幸)

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