【石井一久クロスファイア】僕とランディのトレード話と幻のユニ

[ 2017年8月2日 08:30 ]

90年日米野球で、中日の落合博満と対戦するシアトル・マリナーズのランディ・ジョンソン
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 今年も7月31日(米国時間)の期限を前に多くの「駆け込みトレード」が成立し、日本選手はダルビッシュと青木が移籍した。連日、トレードの噂話がメディアをにぎわしていたが、当事者には噂レベルの段階では、話は下りてこない。球団から通達されるのは、トレードが決まる直前。野球に集中しようと思っても、毎日、報道陣にトレードのことを聞かれるし、クラブハウスもこの1週間はざわざわして落ち着かない雰囲気になる。

 それでも決まってからは早い。米国ではトレードが頻繁に行われるだけに、受け入れの準備は万全だ。その日に試合に出場するケースもあるので、ユニホームは事前に作ってある。僕はドジャース時代の04年オフに、ダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンらとのトレード話があり、最終的には破談となったが、翌年のキャンプの時にクラビー(クラブハウスの用具係)に「これがランディの幻のユニホームだよ」と見せてもらったことがある。

 各球団のクラビー同士の横の連携も取れている。僕は結局、翌年3月にメッツにトレード移籍したが、ドジャースのクラビーがメッツ側に「石井は毎試合、帽子を替えるから、たくさん用意しておくように」とか、「石井のスパイクはこう磨くように」とか、インフォメーションをちゃんと渡していたので、新天地でも野球に関しては、何の苦労もいらなかった。

 日本ではトレードというと、どこか感傷的なムードになってしまう。米国でももちろん、愛着のある球団を離れるのは悲しいし、よくしてくれた球団スタッフとお別れするのも寂しい。でも、それはトレードが決まったその日だけ。選手は、試合に勝った負けたと同じくらい、当たり前のことと理解している。ダルビッシュのような大物選手のトレードがあるから、ポストシーズンに向けた8月、9月の戦いは一層盛り上がりを見せる。

 ちなみに、僕は野球ゲームに夢中になっている時に、突然、GMから電話がかかってきて、メッツへのトレードを通告された。トレードの話になると、いつもそれを思い出す…。 (本紙評論家)

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2017年8月2日のニュース