【記者の目】ダル 投手に過酷な本拠で胸張れる防御率3.60

[ 2017年7月29日 08:10 ]

レンジャーズが交換トレ―ドで放出する方針を固めたダルビッシュ
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 ダルビッシュがレンジャーズから移籍する可能性が高まった。シーズン終了後にFAとなる選手の、7月末のトレード。昨季のチャプマン(ヤンキース→カブス)のように、結果的にサッカーの「レンタル移籍」のような形でオフにレンジャーズが再契約を結ぶことは可能である。しかし、私はその可能性は低いとみている。最大の理由は、本拠地グローブライフ・パークで投げることの難しさだ。

 風向きは試合ごとに変わる上、風が吹き抜ける構造でないため建物の内壁に当たってグルグル回り、制球が難しい。酷暑によりフィールドが硬くなり、内野は球足が速くゴロが内野はゴロが抜けやすい。固いマウンドは足にも負担が大きい。

 15年のサイ・ヤング賞左腕で、抜群の制球力が武器のカイケル(アストロズ)は言う。「風の吹き方という点では最もユニークな球場。集中して制球しないといけないが、風向きが一定しないから難しい。あの球場で制球が悪いと大量失点してしまう」。これまで9試合に投げて通算防御率5・74と大苦戦。80〜90年代にドジャースのエースで、02〜05年はレンジャーズの投手コーチだった野球解説者のオレル・ハーシュハイザー氏も「狭いわけではないが、大リーグ屈指の投げにくい球場」と、難しさを実感している。

 大リーグで50年近いキャリアを誇り、ヒューストン在住のゴードン・ラッキー・スカウト(フィリーズ)は、同じテキサス州のアストロズと比較する。「テキサスのしゃく熱の太陽の下で普通に野球をするのは難しい。アストロズは硬すぎるグラウンドで野球にならず、ドーム球場(アストロドーム)を完成させた。今も屋根が開閉式の球場」。球団創設の72年から今まで、屋外球場でプレーしているレンジャーズは、同年以降サイ・ヤング賞投手を一人も輩出していないア・リーグ唯一の球団である。

 ダルビッシュの5年半のホーム通算成績は通算31勝19敗、防御率3・60。これは十分、胸を張れる数字といえる。過去のエース格の投手の防御率はケニー・ロジャーズ(3・99)、C・J・ウィルソン(4・20)、ケビン・ミルウッド(4・47)、ケビン・ブラウン(4・79)ら、軒並みダルビッシュよりも苦戦している。

 メジャーでは周知の事実だが、FAの大物先発投手はレンジャーズを選ばない。成績が下がると分かっているからだ。20年にようやく開閉式の屋根が付いた新球場が完成する予定だが、いかんせん3年後。ダルビッシュの引き留めるのは厳しいと言わざるを得ない。(奥田秀樹通信員)

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2017年7月29日のニュース