メジャー最年長イチローの「振り抜く力」 その重要性とは

[ 2017年7月2日 10:00 ]

メジャー最年長選手となったマーリンズのイチロー(AP)
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 2012年に92歳で亡くなったレッドソックスのレジェンドであるジョニー・ペスキーさんの言葉をふと思い出した。「イチローの打撃のどこがすごいか分かるかい?安打の数じゃない。技術より前に振り抜く力だ」。日本人メディアをつかまえては、そう力説していた。「何においても強さがないと駄目だ。イチローはストロングであるかぎり、スターだよ」。ただ、私は「技術」が「強さ=パワー」を上回れると正直、考えていた。だから話半分に聞いていた気がする。

 当時、レイズのジョー・マドン監督が守備位置を大胆に変えるシフトを敷いていた。ペスキーさんは、昨年引退したレッドソックスの主砲デービッド・オルティス氏に「オーバーフェンスでいいんだ」と語りかける場面も何度も目にした。

 プレーが走攻守に渡って数値化され、全30球団か打球方向のデータをもとに各選手に対して守備シフトを敷くようになった。それと同時に、守備シフトに関係のないフライを打つためのアッパースイングの打者が増えているとの米メディアの分析もよく目にするようになった。ペスキーさんがオルティス氏に言っていた言葉が、各球団が実践している現在にもつながっている。もっと真剣に聞いていれば良かったと後悔している。そのメジャーの舞台で、イチロー選手は最年長選手となっている。

 日本球界も「巧さ」だけでは通用しない時代となった。交流戦でパワーで勝るパ・リーグが投打に圧倒する年が続き、体のサイズに関係なく「強さ」が必要になった。選手だけでなく、野球を見ている誰もが感じられるようになった。トレーニングの進化もあるだろうが、各球団、「強さ」を身にまとった選手がどんどん出てきている。

 数年前、東京ドームに来ていた大リーグのスカウトが「巨人の若い選手に振り抜く力がない。松井秀喜や阿部を生んだ球団とは思えない」と話していた。若手の台頭がないまま、7月1日時点で巨人の自力優勝の可能性が消滅した。ペスキーさんが今の巨人の戦いを見たら何て言うだろうか。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2017年7月2日のニュース