小6で喪主 中日ドラ1柳 父の日に天国へ届け…初勝利「伝えたいです」

[ 2017年6月19日 05:30 ]

日本生命セ・パ交流戦   中日4―3西武 ( 2017年6月18日    ナゴヤドーム )

<中・西>プロ初勝利のウイニングボールを手に、森監督(左)の祝福に笑顔で応える柳
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 祈りが通じた。3―3の7回1死二塁。代打を送られ、ベンチで見守っていた中日の柳は亀沢が勝ち越し打を放った瞬間、両拳を突き上げて叫んだ。3度目の先発で待望のプロ初勝利。それも本拠地で飾り「先発で2回とも負けていたのでチームが勝てる投球をしたかった。降板した後に野手の方が点を取ってくれて頼もしかったです」と笑顔で話した。

 初回、浅村に先制二塁打を浴び、なおも1死二、三塁のピンチ。「1点を取られても次の1点を取られないよう考えた」と切り替え、中村を得意のカットボールで空振り三振に仕留めて後続を断った。強豪の横浜高、明大でエースを務めた右腕。2回にはバント処理を好守で併殺にし、経験値を発揮した。

 初めて上がったお立ち台。「今日は父の日。(プロ初勝利を)父親に伝えたいです」と言った。父・博美さんは小学6年の時、交通事故で他界(享年37)。子供の頃、野球を教えてくれ、キャッチボールの相手も博美さんだった。告別式では憔悴(しょうすい)の母・薫さんに代わり、喪主としてあいさつした。

 「喪主という感覚はなかった。手紙を読んだんです」。そう振り返るが、プロ野球選手となり、家族を支えると亡き父に約束した。あれから11年。ウイニングボールを手にした23歳は「仏壇に置こうと思っています」と話し、目尻を下げてこう続けた。「家族が一番。こういう日(父の日)に勝たせてもらい、何かあるのかな」。天国の父、女手一つで育ててくれた薫さんへの感謝を表す白星だった。 (徳原 麗奈)

 ▼中日・森監督(柳は)精神的に崩れることがないと見ていて思う。大学日本代表や東京六大学で投げてきただけある。他の新人と違う。

 ≪柳 裕也(やなぎ・ゆうや)≫

 ☆生まれ&サイズ 1994年(平6)4月22日、宮崎県都城市生まれの23歳。1メートル80、83キロ。右投げ右打ち。

 ☆球歴 小学3年から野球を始め、松原中では「都城シニア」に所属。横浜に進学し2年春夏、3年春と3季連続甲子園出場。明大では東京六大学リーグ通算23勝、史上8位の338奪三振。4年時は明大、大学日本代表で主将を務めた。16年ドラフトでDeNAと競合の末、中日入り。

 ☆おみくじ大吉 今年1月2日に地元・都城で始動し「野球を始めた場所。ここからスタートしたかった」。昔から初詣に通った母智丘(もちお)神社では、大吉を引く強運ぶりも。

 ☆ライバルは星 ヤクルト・星とは明大時代にしのぎを削り、5月28日(ナゴヤドーム)にプロ初対戦も実現。初白星は星が先に挙げており「いろんな大卒のピッチャーがいるけど、一番のライバル。励みにもなる」。

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