西武・菊池雄星 先頭打者封じでワンランクアップへ

[ 2017年6月12日 11:30 ]

西武・菊池
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 【宮入徹の記録の風景】簡単に安打は許さない。西武の菊池雄星投手(25)は12日現在、80回を投げ被安打は46本。1試合9イニング換算の被安打率は5・18になる。セ・パの規定投球回到達投手は12球団で31人いて、菊池はこの被安打率が楽天・美馬の5・79を抑え最も低い。

 2リーグ制後のシーズン被安打率5・50以下の投手を出すと(1)70年村山実(阪神)4・90(2)59年村山実(阪神)5・03(3)56年小山正明(阪神)5・19(4)56年稲尾和久(西鉄)5・25(5)07年ダルビッシュ有(日本ハム)5・33(6)56年島原幸雄(西鉄)5・42(7)56年金田正一(国鉄)5・44(8)68年江夏豊(阪神)5・471(9)54年西村貞朗(西鉄)5・465。

 わずか9人、それも球史を彩った名投手がズラリと並んでいる。ここまでの菊池の被安打率は単独3位に相当する凄い数字。無論、シーズンを通しこれだけの数字を維持することは簡単ではないだろう。それでも今季の菊池なら、と期待を抱かせる成長ポイントがいくつかある。

 1つは各イニングごとの慎重な入りだ。今季のイニング先頭打者に対する成績は72打数9安打で被打率は・125と極めて低い。5月26日楽天戦の5回から前回登板の6月9日DeNA戦8回までイニング先頭打者18人に対し、出塁させたのは与四球と自軍野手の失策による2人だけ。この間、17打数連続無安打を継続中とつけ入るスキを与えない。さらに各イニングの最多被安打は2安打。3安打以上打たれたケースは1度もない。先頭打者を確実に打ち取り、集中打を防ぐ。大崩れを回避する投球術が今季の好成績につながっている。

 もっとも、菊池の場合、ソフトバンク戦の苦手意識は払拭出来ていない。11年のデビュー以来、このカードは15試合に登板し0勝10敗といまだ勝てない。今季も喫した2敗はいずれもソフトバンク戦。ただ、2試合の投球内容は4月7日は7回4失点(自責2)、5月19日は8回2失点(自責2)と、ともに6回以上を投げ、自責点3以下のクオリティー・スタート。防御率は2・40だから決して悪くない。実際、昨年までソフトバンク戦は13試合に登板し0勝8敗、防御率4・94と散々。今季の投球内容を見る限り、鬼門のカードで初勝利を挙げる日もそう遠くないだろう。

 12日現在、菊池は防御率1・46でリーグトップ。昨年は自身初めて規定投球回に達し、防御率2・58でソフトバンクの千賀(2・16)に次いでリーグ2位と健闘した。90年以降、防御率2位から翌年初めて1位に順位を上げたのは95年伊良部秀輝(ロッテ)、04年松坂大輔(西武)、06年黒田博樹(広島)、09年ダルビッシュ有(日本ハム)、13年田中将大(楽天)、14年金子千尋(オリックス)と6人いる。菊池も丁寧な投球を続け、最優秀防御率のタイトルにつなげたいところだ。 (専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

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