高校通算本塁打の記録保持者、山本大貴さん 清宮に更新期待「僕もうれしい」

[ 2017年5月29日 06:30 ]

JR西条駅の改札に立つ山本大貴さん
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 神港学園時代に高校通算本塁打の最多記録とされる107本を放った山本大貴さん(22)が、28日の招待試合・美来工科戦で96本まで数字を伸ばした早実の清宮に記録更新を期待した。

 「清宮君は日本球界を背負っていくような選手。自分とは本当に比べものにならない。抜いて活躍してもらった方が僕もうれしい」

 高3の夏前に練習試合で108号を放ったが、雨天ノーゲームで幻となった。神港学園のグラウンドは右翼90メートル、中堅105メートル、左翼100メートル。山本のような左の強打者に有利な自校グラウンドでの量産ぶりに批判の声も少なくなく、「これ以上打ったら神港学園が叩かれると思っていた」という。一方では「グラウンドが狭いと知っていたので、本数を気にせず開き直っていた。“いけるだけいったれ”みたいな感じ。自分たちは球場は選べないので」とも。通算94本塁打で歴代4位の伊藤諒介(現大阪ガス野球部)は神港学園の2学年先輩で、同じく左打者だ。

 量産の背景にはグラウンドのこともあるが、もちろん山本自身のポテンシャルも高かった。「スイングスピードは速い方だった」。最高は158キロで超高校級。そのスイングに「転がすより打球を上げろ」という神港学園の指導方針がマッチし、1年夏から定位置を獲得して順調に本塁打を伸ばしていった。

 思い出の一発には、3年春に明石トーカロ球場で放った140メートル弾を挙げ「あれはどこの球場でも入っている」と笑った。同年夏に甲子園に出場した滝川二からのアーチだ。手元にあるホームランボールは数えるほど。中2の時に父・清潤(せいじ)さんを亡くし、女手一つで支えてくれた母・幸代さんの誕生日が8月1日とあって、通算81号と100号のボールはこ感謝の気持ちを込めて母に贈った。

 甲子園出場はできなかった。107本中、公式戦での本塁打は「10本ちょっと」。「そんなに強い高校とも(練習試合を)やらなかった。自分が(プロで)通用するようなイメージが全然わかなかった。打撃は自信があったけど、守備は苦手だった。行ける人なら社会人に行ってからでも行けると思った」とプロ志望届は出さなかった。

 高校卒業後はJR西日本に入社。社会人野球での通算本塁打は「5、6本」にとどまり、昨年限りで現役を退いた。花巻東・大谷(現日本ハム)、大阪桐蔭・藤浪(現阪神)と同学年。2人が対戦した12年センバツ1回戦は右翼席で観戦していた。座った席の近くに大谷が藤浪から放った特大弾が目の前に転がってきたという。107発男が「おー、すげー」と魅了された大谷の本塁打。2人がプロの世界で活躍する姿を見ても「凄いとは思うけど、(プロへの未練は)全然ないですね」という。それよりも「やはり甲子園で1本打ちたかった」と、聖地でアーチをかけられなかったことが心残りだ。

 現在は広島県東広島市の西条駅で働く。清宮が本塁打を打つたびに同僚から「“お前、あと何本で抜かれるぞ”と言われる」と笑う。「高校生の春季大会で(観衆が)2万人も入るのは異常じゃないですか。その中で自分を見に来ているのをわかっていて平常心で野球ができているのが凄い」と、清宮の精神的な強さを称えた。自身の記録は超えられることは、もう覚悟している。「108本目はみんなが見られるから甲子園で打ってもらいたい。仕事の兼ね合いもあるけど、そうなったら見に行きたい」。一野球ファンとして、その瞬間を楽しみにしている。(東尾 洋樹)

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