同僚すら敵…初勝利の巨人・篠原　育成からはい上がったストイックさ

セ・リーグ   巨人１―０ヤクルト （ 2017年4月19日    鹿児島 ）

＜巨・ヤ＞プロ初登板初勝利の篠原（右）はウイニングボールを手に高橋監督の祝福を受ける
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　史上初の大仕事だ。巨人は１９日、ヤクルトを１―０で下し、４連勝で２位に浮上した。３戦連続の完封勝利の立役者となったのが、育成選手から支配下選手契約を結んだばかりの篠原慎平投手（２６）だ。先発の高木勇人投手（２７）の負傷降板の後を受け、３回から登板し、３回を４安打無失点の快投。プロ野球史上初となる育成出身選手の初登板初勝利を手にした。

　こわばった表情が「快晴」に変わった。勝利の瞬間を見届けベンチを飛び出した篠原は、高橋監督から背中を叩かれた。

　「うれしいの一言では表せないぐらいの感情。本当に急きょだったので緊張する間もないくらいだった」

　２回に犠打を試みた先発の高木勇が、右手にボールを受け緊急降板。３回だ。２日前の１７日に支配下登録されたばかりの育成出身腕が、ブルペンから１軍での初マウンドに向かった。

　スライダー、フォークの変化球に頼らず、最速１５０キロの直球で押した。まずは西浦を見逃し三振。１死からブキャナンの左翼線二塁打と、四球などで一、三塁のピンチでは、一塁から駆け寄った阿部に背中を押してもらった。「直球でいけ！打たれていいよ。自分で配球を難しくするな」。谷内に３球連続で直球を投げ、三ゴロ併殺に仕留めた。毎回安打を許したが３回を４安打無失点。「本当にピンチばかりで野手の方の守備に助けられた。運もあったと思う」と感謝した。救援陣も１点を守り抜いた。チーム全員に支えられた史上初の育成出身選手の初登板初勝利だった。

　「雲外蒼天（うんがいそうてん）」。育成３年目を迎える２月１日、キャンプ地宮崎の青島神社で絵馬にしたためた。「困難を乗り越え、努力して克服すれば“快晴”が望める」という意味だ。度重なる悔しさを味わい、選んだ言葉だった。

　右肩手術を乗り越え、１４年に育成ドラフト１位で巨人に入団したが、昨年、長谷川とウーゴが育成から支配下に昇格。「大きいチャンスを逃した。悔しかったし、何やってんやろ…」とストイックさは増した。「遠慮したり、隙を見せたら終わり。全員が敵」とチームメートにすら対抗心を燃やし上昇の糧にした。

　１４日間の昨秋キャンプは全練習日でブルペン入りし、休養日もネットスローを行った。努力を知る尾花投手コーチは「勝ちがついたのは神様のプレゼント」と喜ぶ。２軍でも最長登板は２イニングだったが、３回を投げ、チームを３試合連続完封の４連勝に導いた。高橋監督も「急きょの登板で、いいボールを投げていた。これを次の自信にしてくれれば」と称えた。

　桜島を望む鹿児島に３軍の遠征で一度だけ来たが、雨天中止だった。「３軍でお世話になり、２軍で経験を積んでここにいる。一生の思い出ができた」。初めて立ったお立ち台からの景色を忘れることはない。（神田　佑）

　▼巨人・小林（篠原は）どんどんいいボールを使っていこうと思った。自分の持っている球を落ち着いて堂々と投げてくれた。

　≪デビュー２戦目は０７年山口鉄（巨）、１３年西野（ロ）≫篠原（巨）がプロ初登板で勝利投手。巨人の初登板初勝利は１５年４月１１日ヤクルト戦で田口が記録して以来になる。篠原は１４年育成ドラフト１位で入団。育成出身投手でデビュー２戦目に勝ったのは０７年山口鉄（巨）、１３年西野（ロ）といたが、初登板で白星は篠原が初めてだ。

　≪４試合が最多≫巨人は篠原を含め６投手の継投で完封勝利。これで１６日中日戦から３試合連続完封勝利。チーム連続試合完封勝利の最多記録は１０年中日、１１年日本ハムの５試合。巨人では７４年まで９度あった４試合が最多。明日の阪神戦で４３年ぶりとなる球団記録に挑戦する。

　≪篠原　慎平（しのはら・しんぺい）≫

　☆生まれ＆サイズ　１９９０年（平２）６月１３日、愛媛県生まれの２６歳。１メートル８６、９７キロ。右投げ左打ち。

　☆球歴　中学時代は川之江ボーイズに所属。川之江では２年夏に県４強も中退。今治精華高通信制課程松山校を経て、０８年に四国ＩＬ・愛媛入り。１３年から香川でプレーし１４年育成ドラフト１位で巨人入り。今年４月１７日に支配下選手登録。

　☆復活　独立リーグでプレーしていた１０年オフに右肩を手術。

　☆持ち球　直球は最速１５３キロ。スライダー、フォークも武器。

　☆奪三振王　昨年、台湾でのウインターリーグでは１３回を投げ２０奪三振で奪三振王。

　☆目標　育成出身で同僚の山口鉄。「同じチームに山口さんという育成出身の投手がいる。目標にしていきたい」