【黒田博樹氏観戦記】沢村賞左腕の攻略呼んだ阪神の初回強攻策

[ 2017年4月1日 08:05 ]

セ・リーグ   阪神10―6広島 ( 2017年3月31日    マツダ )

<広・神>解説席に入る黒田博樹氏
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 日米通算203勝を挙げ、昨季限りで現役引退した前広島の黒田博樹氏(42)が、広島―阪神(マツダ)の開幕戦観戦記をスポニチ本紙に寄せた。

 広島・ジョンソンと阪神・メッセンジャー。両軍開幕投手の実績と、独特の緊張感が覆う開幕戦を考えると、僅差の投手戦を予想したが、序盤から思わぬ展開になった。

 阪神の初回、簡単にアウトを与えなかった攻撃がポイントだ。先頭・高山が内野安打を放った無死一塁の場面。バントが真っ先に考えられるが、阪神ベンチは強攻策を選択、上本は二塁内野安打で出塁し、無死一、二塁に好機は広がった。

 投手心理からすると、開幕戦は1つ目のアウトがすこぶる大事だ。送りバントでアウトをもらうと、次の打者に集中しやすい。仮に点が入ったとしても1点止まりの可能性が高い。ジョンソンには犠打を選択してくれる方が楽だったはずだ。

 阪神としてみれば、相手は難攻不落のジョンソン。どうせ点が取れないなら、一か八か勝負をかけてみる手はあろう。簡単にアウトを与えるぐらいなら、攻撃的にいって大量点を狙う方が勝機はある…という考え方もできる。上本は3回無死一塁でも送らず、四球でつないだ。強攻が裏目に出るリスクはあるが、序盤の攻撃には、相手投手を見ながらの、金本監督の采配の妙を感じた。

 昨季のこのカードは、広島の18勝に対して阪神7勝。カープは開幕3連戦に勝ち越せばいいイメージを持続できるが、タイガースとすれば今季の初対戦で昨季の嫌な印象を消し去りたい。その意味で阪神の新戦力が機能したことも、両軍の今後の戦いに少なからず影響を与えるとみる。

 3番に入った糸井だ。上本が四球でつないだ3回の好機に2点二塁打を左中間へ運び、4回にも適時打を放っている。広島バッテリーにしてみれば、阪神戦に対する好印象がある中で新戦力には打たれたくない。その打者を機能させてしまったとなれば、昨季のようにはいかない可能性が出てくる。逆に言えば、糸井の一打は阪神ナインに勇気を与えたと言える。

 広島はジョンソンが誤算だった。インサイドの出し入れに特徴のある投手。角度があり、カットボールも投げるため、右打者は内角にどうしても意識が向く。ボール球にも手が出る。ところが、この日は右への内角球がほぼボールになった。その分、打者は余裕を持って打席に立てたと思う。

 昨季の沢村賞投手にあまりネガティブなことは言いたくないが、過去2年の先発初戦はすべて好投していた。こうした大量失点は初経験。昨季1年を通しても、こんな失点の仕方は無かったはずだ。少し気掛かりだが、エースである以上はしっかり立て直してほしい。

 好材料もある。鈴木の3安打に新井の一発。前者は、昨季の好調時の内容にはまだ見えないが、開幕戦で結果が出たことに意味がある。後者はいろいろ考え、責任を感じる性格。40歳で4番を打たせてもらう中で1本出たことは、彼自身にとって大きく、明日以降の打席に生きるだろう。

 2戦目以降の戦いだが、阪神は先に勝ったことで余裕が出てくると思う。攻撃のバリエーションの面でも、いろんなことを仕掛けてくると予想する。広島とすれば、逆に変に構えないことが肝要だ。昨季相性のよかった阪神に1つ負けたからといって、バタバタする必要はない。あくまで143試合分の1。どっしり構えて、自分たちの野球をやればいい。

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2017年4月1日のニュース