【検証 侍ジャパン】編成面の課題“象徴”早々の「打者・大谷」招集断念

[ 2017年3月23日 08:00 ]

WBC準決勝   日本1―2米国 ( 2017年3月21日    ドジャースタジアム )

1月31日、WBCに投手として出場を断念する会見を行った大谷
Photo By スポニチ

 侍ジャパンは2大会連続で世界一奪回を逃した。3年後には東京五輪が控える。敗戦の要因と検証から次へのビジョンが示されなければ、同じことが繰り返される。13年に侍ジャパンを常設化してから初めてのWBC。戦い方、選手選考、体制はどうだったのか。見つめ直す必要がある。

 3月14日。2次ラウンド中の東京ドームの一塁ベンチ裏でスポーツ紙を手に、チーム関係者は話した。「大谷はよく打っているね。どうしてあの時点で判断したのか。もっと大会ギリギリまで見極めれば良かったのに」。“打者・大谷”の招集断念を小久保監督が決断したのは、1カ月以上前の2月3日だった。

 前回大会後の13年10月に侍ジャパンが常設化され、NPBエンタープライズが誕生。あくまで事業を手掛ける会社で、編成権は日本野球機構(NPB)にある。しかし、NPBは日本ハムから事前に右足首痛で調整が難しいと報告がありながら、小久保監督と真剣に対応を協議しなかった。しびれを切らす形で、日本ハムが投手としての出場断念を公表。その後、迅速に事態収拾に動いたのは「編成権のあるNPBではなく、NPBエンタープライズの今村司社長」と関係者は話す。実際、招集の是非を判断する時点で12球団のキャンプ視察を行う小久保監督に付き添っていた編成部門の職員はいなかった。

 メジャーリーガーの招集に関しても指揮官自ら選手と会い、本人の置かれた状況を確認。NPB所属の故障明け選手の回復状況を確認するのも指揮官だった。NPBに任せきりにされ、招集の“全権”を握らされた形の指揮官はどうしても選手に気を使う。如実に表れたのが、大谷の打者としての出場を早々と諦めたことだろう。配慮から成り立った28人だった。ふくらはぎ痛で出場が難しい状況だった嶋(楽天)を大会直前まで引っ張ったが、最終的に追加招集した西武の炭谷を強化合宿中に呼ぶこともできた。一方で大谷を嶋と同様に引っ張り、打者としての出場をぎりぎりまで見極めることもできたはずだ。NPBが小久保監督ともっと話し合えば、違う方法を模索できた。

 NPBと代表の関係について小久保監督は「(意見は)いっぱいありますけど、しっかり中で議論しないといけないこと」と話した。今後は新監督人事も含め、編成に関する責任の明確化は不可欠。監督とともにチーム編成を考えるGMを置くなど体制を改善していかなければ、最強ジャパンは誕生しない。 (侍ジャパン取材班)

続きを表示

2017年3月23日のニュース