【侍Jライブ解説・大野豊氏】〈総括〉防ぐ策あった8回の失点 この経験を若い選手に伝えて

[ 2017年3月22日 13:51 ]

米国に敗れベンチでぼうぜんとする松田(右端)ら日本ナイン
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 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は21日(日本時間22日)、決勝ラウンドの準決勝で日本代表が米国代表と対戦。侍ジャパンの熱戦の模様をスポニチ評論家の大野豊氏がライブ解説を行った。

◇試合経過
米000 100 010|2
侍000 001 000|1

 〈総括〉残念な結果になった。劣勢を跳ね返す強さ、僅差の中での強さを、もう一つ出し切れなかった。失点の仕方が悔やまれる。特に8回の決勝点。松田のジャッグルはあったが、その前にキンズラーに打たれた二塁打。防ぐ策はあったと思う。

 そして、いろんなタイプの投手を小刻みにつないできた米国に対し、打線が対応できなかった。大会前の準備段階から、米国のリリーフ陣のような変則的フォームで、なおかつ速い球を投げてくる投手への対策として、青木のアドバイスもあって早くタイミングをとっていくということをやってきた。それでも動く球に対し、試合中に対応ができなかった。情報を集めるという準備だけではない、試合の中での準備に課題を残した。

 選手はきついスケジュールの中で集まり、ここまでよく頑張った。目標を果たせず、精神的な疲労度もあると思うが、これから日本のプロ野球の開幕へうまく切り替えていってほしい。そして、この経験をチーム内で、特に若い選手に伝えていってほしい。野球、そして勝利に懸ける思い、国際大会で勝つことの難しさ…。そういうものを共有し、研究、努力して「強さ」を身につけていってもらいたいと思う。

 〈9回 ピンチは乗り切ったが、攻撃は3者凡退で惜敗〉

 〈8回 米国 二、三塁から内野ゴロで再度1点リード〉

 危惧していたことが起きた。千賀は素晴らしい投球をして、登板から4者連続三振で1アウト。安打で1人のランナーが出たところから失点するというのは、往々にしてあるし、私も経験した。1死一塁からのキンズラーの二塁打。2ストライクからの3球目は球速からして、スライダーだったと思うが、甘くなった。悔やまれる1球。こういう1球をやってほしくなかった。

 二、三塁になって前進守備の松田がゴロをはじき、バックホームできず失点した。近くにいる三塁走者が走者が目に入ったのか。1点目といい、取られ方が悔やまれる。裏の攻撃、内川が手本のような打撃をした。何とか取り返してほしい。

 〈7回 2番手・千賀、3者連続三振〉

 負けられない試合。緊張感の中で、千賀が素晴らしい1イニングを見せた。持ち味を十分に出し、メジャーの打者を見下ろしているようだった。2次ラウンドまででつかんだ自信、自分のボールを投げられればいける、という気持ちが感じられる。スキを見せずにいってほしい。

 菅野は6回を投げ、自責点は0。緊迫の雰囲気、悪天候の中で、よく投げた。小林との信頼関係も見て取れた。試合を重ねるごとに小林に対する投手の信頼は高まり、小林もよく引っ張っている。

 〈6回 菊池が右翼へ同点ソロを放つ〉

 菊池の一発。変則フォームで速球を投げてくるN・ジョーンズの158キロを捉えた。強く叩くという打撃が見られたし、打球がよく伸びた。自分の失策から失点し、取り返したいという思いがこもったような打球だった。広島でのプレーをいつも見ていて、切り替えが非常にうまい選手だと思っている。そして、自分がやらなきゃという気持ちが強い。いい面が出た。

 直前の守備。小林が盗塁を刺し、菅野が気合の入った投球で4番アレナドを3球三振。流れを引き寄せた。

 〈5回 米国が継投に入る〉

 ロアークを48球で下げ、米国は継投に入った。いい流れの中で代えていこうということなのだろう。メジャー各球団で力を発揮しているレベルの高いセットアッパー、クローザーが、小刻みに出てくると考えられる。

 目線をどんどん変えられる中、いかに対応力を発揮できるか。各投手の特徴、情報は頭に入っていても、短い対戦で結果を出していくのは容易ではない。とはいえ、先行されている以上、打線の奮起がなければ道は開けない。

 〈4回 米国が1点先制、日本は走者を出すも無得点〉

 名手菊池のエラーから1点を先に失った。正面のゴロだったが、芝の切れ目。芝が雨を含んでいて、打球の勢い、スピンといったあたりがイメージと違ったのだろうか、グラブの土手に当ててはじいた。

 マカチェンに適時打を許す前、ホスマーを2ストライクと追い込みながら四球で歩かせたのも痛かったし、適時打はスライダーを捉えられた。若干甘く入った球。打たれた後、菅野の口の動きは、捕手の小林に、すまないと謝っていたように見えた。しかし、試合はつくっている。あとは打者。ロアークの球を捉える反応が少し悪い。元気を出していくしかない。

 〈3回 菅野が走者を許すも後続を抑える〉

 米国の攻撃で無死一塁からスタントンが三ゴロ。松田がいい動きでゲッツーに取った…と思われたが、リプレー検証で二塁セーフに判定が変わった。

 日本の攻撃では1死一塁から山田の遊ゴロでの二塁転送で小久保監督がビデオ判定を求め、判定通りアウト。山田が盗塁すると、米国の監督がビデオ判定を求め、判定通りセーフになった。

 これだけビデオ判定があると、なかなか試合のリズムが出てこないが、ルールのもとでやっていること。ビデオ判定を念頭に置けば、一つ一つのプレーをより丁寧に行う必要がある。菊池の二塁カバーは、その瞬間、「大丈夫か?足が離れているんじゃないか」と思った。

 〈2回 両軍得点なし〉

 やはりロアークはどんどんストライクを投げ込んでくる。ストレート系の球に対して、日本の打者は坂本勇のファウルであったり、松田のゴロであったり、まだまだ差し込まれている印象だ。追い込まれるまではスライダーは捨てて、真っすぐ系1本でいっていい。

 今日の球審は割と低めをストライクに判定しているように見える。このあたりを、今度は菅野がうまく使っていってほしい。

 〈初回 侍J、三塁まで走者を送るも無得点〉

 菅野は変化球を使いながら、いい入りができた。決して彼本来のコントロールで投げ切れてはいないが、何より3人で終われた。雨の中の投球だが、天候に負けず投げていってほしい。

 攻撃は先頭の山田が死球で出た後、菊池がバントで送り、形を作った。ロアークの特徴は、この回打席に立った4人でしっかり把握できたと思う。8、9割がツーシームを含むストレート系。どんどんストライクを取ってくる。タイミングを合わせ、振り負けないことだ。

 【日本代表スタメン】投手 菅野

1番(DH)山田、2番(二)菊池、3番(右)青木、4番(左)筒香、5番(一)中田、6番(遊)坂本、7番(三)松田、8番(中)秋山、9番(捕)小林

【米国代表スタメン】投手 ロアーク

1番(二)キンズラー、2番(中)A・ジョーンズ、3番(左)イエリチ、4番(三)アレナド、5番(一)ホスマー、6番(右)マカチェン、7番(捕)ポージー、8番(DH)スタントン、9番(遊)クロフォード

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