菊池 3・11誕生日に思うこと…勝って笑って伝えたい

[ 2017年3月12日 05:30 ]

WBC2次ラウンド   日本―オランダ ( 2017年3月12日    東京D )

ノックで華麗な動きを見せる菊池
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 アサヒスーパードライプレゼンツ・第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一奪還を目指す侍ジャパンはきょう12日、A組2位のオランダと2次ラウンドの初戦を迎える。1次ラウンドを3戦全勝で1位通過したチームは、東京ドームで前日練習を実施。東日本大震災から6年を迎えたこの日、27歳の誕生日を迎えた菊池涼介内野手(広島)は被災地への思い、野球に懸ける覚悟を語った。

 練習開始前、小久保監督ら首脳陣、選手、全スタッフが右翼付近に集結し、東日本大震災の犠牲者へ黙とうをささげた。27歳の誕生日を迎えた菊池は輪の中、厳しい表情でこうべを垂れていた。

 あの日を境に誕生日は記念日ではなくなった。「普通に食事に行ったりはします。祝ってもらう時は、できるだけ翌日にお願いしていました」。今年に限り、練習後に選手宿舎で小久保監督をはじめ、複数の選手から祝ってもらった。周囲に深く感謝すると同時に、いまだ日常を取り戻すことのできない人々、被災地へと思いを寄せた。

 2011年3月11日。21歳の誕生日、菊池は母校・中京学院大の学校案内の写真撮影で、岐阜県中津川市の野球部グラウンドにいた。午後2時46分。東北から遠く離れた地でも感じた強い揺れ。大学の1学年下には宮城県出身の後輩がいた。「実家が被災して、言葉では表現できないくらい不安で大変だったと思う。応援もしたけど、結局、何もできなかったのかなって思う」。後日、後輩が津波で愛する家族を失ったことを知った。ただ無力感だけが残った。

 「自分に何ができるか」を自らに問い続けた6年だった。

 「僕は幸運なことに、中学から高校、大学と野球を楽しくやらせてもらった。だからどんな試合でも楽しみたい。野球って楽しいんだ、菊池って楽しそうに野球をする選手だねって。そう思ってもらえるだけでいいと思うようになりました」

 震災で野球どころではなくなってしまった人々がいる。野球をやめてしまった少年、少女もいるだろう。もし、まだ野球を好きでいてくれるのなら、自分のプレーで、少しでも楽しんでもらいたい。それが導き出した結論だった。

 練習後の会見では「僕は僕らしく、いい意味で楽しく野球をやりたいと思います」と誓った。現在、仙台に住む後輩とは変わらず、親交を続けている。後輩はじめ、たくさんの人がきっと「楽しい野球」を待っている。

 「日の丸を背負う重圧はありますよ。ただそんな状況でも僕は楽しい。(決勝トーナメントの)アメリカに行ったら、もっと楽しいでしょうね」

 3月12日。菊池は強豪オランダを破り、誕生日を思い切り祝う。 (桜井 克也)

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