侍J小久保監督 孟子の言葉でナイン鼓舞 ベンチには離脱・嶋のユニ掲げ

[ 2017年3月8日 06:15 ]

WBC1次ラウンドB組   日本11―6キューバ ( 2017年3月7日    東京ドーム )

<日本・キューバ>ガッツポーズの小久保監督
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 スモール野球からビッグイニングへ。侍ジャパン・小久保監督の理想とする攻撃が勝利への流れをつかんだ。2―1で迎えた5回に打者11人の猛攻で一挙5点を奪った呼び水は、1死から四球で出塁した中田の二盗だった。

 「走ってはいけない場面ではサインがあるが、隙があれば行っていいということで、あの場面はフリーにしていた。足の速い、遅いに関係なく、隙を突く。思い切ったスタートだったと思う」

 指揮官もそう称えた盗塁。マウンドは左腕のイエラだったが、中田は次打者・坂本勇の2球目にスタートを切った。スライダーがワンバウンドとなり、捕手が投げることもできない。昨季は2個、プロ9年間でわずか通算13盗塁の大砲が「クセというか、いけたらいけということだった。モーションも大きかったから。アウトになったら仕方がない」と割り切って勝負した。直後に坂本勇の左翼線適時二塁打が飛び出した。

 選手、ベンチ、スコアラーが三位一体となった盗塁。スコアラーは事前に「イエラが2番手で長い回を投げてくる」と伝えていた。だから選手もイエラのモーションのタイミングをベンチで計ることができた。大会前の実戦でつながらなかった攻撃が「線」となった。

 球場入り後に一塁側ベンチ裏で行った全体ミーティングで、小久保監督は「天の時、地の利、人の和」を説いた。運を味方に付け、地の利を生かす。そして何よりも団結力がなければ戦いに勝つことはできない。中国の儒学者・孟子が残した言葉だ。「3つがそろわなければ勝てない。地の利は東京ドームの大歓声をプレッシャーではなく、力に変えていくこと。何よりも人の和。みんなが心を一つにして戦うことを伝えた」。ベンチには下半身の張りで4日にチームを離脱した嶋のユニホームが掲げられた。心は一つだった。

 「正直、こんなにプレッシャーがかかるとは…。僕が一番地に足がついていなかったと思う。選手は本当に普段通りのプレーをしてくれた」

 そう話す指揮官は、開幕までの実戦5戦で勝敗を度外視し、選手に「準備を突き詰めてきた人が試合で開き直ることができる」と伝えてきた。指揮官の信念を全員が理解してもぎとった1勝の意味は大きい。 (倉橋 憲史)

 ◆「天の時は地の利に如(し)かず地の利は人の和に如かず」 中国の戦国時代の儒教者である孟子と弟子たちの対話などを編集した「公孫丑章句(こうそんちゅうしょうく)」にある一節。天の与えるチャンスも、土地の有利な条件には及ばず、土地の有利な条件も民心の和合には及ばないの意。そこから転じて「天の時、地の利、人の和」は戦略成功のための3条件ともされている。「天地人」は09年に戦国武将の直江兼続を描いたNHK大河ドラマの題名となった。

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