侍ジャパン世界一奪還へ小久保監督は非情になれるか

[ 2017年3月3日 09:20 ]

青木(左)と話す小久保監督
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 その言葉から覚悟を感じたし、一発勝負の国際大会ではなおさらだろう。WBCで世界一奪還を目指す侍ジャパン・小久保監督のことだ。2月22日の集合日。ミーティングで選手たちに「勝つために全ての決断を下していく。全員が納得することはありえない。そういう中で、最後の勝利だけがみんなを救える」と伝えた。勝つために、常に最善策を講じる。そのためなら、非情にもなる。

 小久保監督は、巨人での現役時代に取材する機会があった。どんな嫌な質問にも答えてくれた印象が非常に強い。生真面目。何事にも真しに向き合い、忍耐強さも感じた。侍ジャパンの選手たちの信頼も厚いと聞く。ただ、プロの監督に求めれるのは勝たせることであり、優しさや情けは、時に邪魔をする。例えば不振の選手を見切ることができるか。WBCは短期決戦だけに、復調を待っている時間もない。

 かつて、自らの采配を「情の野球」と表現した指揮官もいた。楽天・星野仙一球団副会長だ。08年北京五輪で日本代表の指揮を執った。本選を前に調子が悪かったり、体調の悪い選手がいながら「予選を戦ったメンバーで」とこだわり、金メダルどころか、4位でメダルすら逃した。勝てなかった悔しさを押し殺し、「後悔はしていない。それが、俺の野球」と言い切る信念には恐れ入る。「非情」と「情」を織り交ぜて功を奏したのは、06年の第1回WBCの王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)だった。準決勝の韓国戦で不振の福留をスタメンから外した。それでも0―0の7回1死二塁の先制機で代打で起用すると、勝ち越し2ラン。「大事な場面で使う」と伝え、福留も期待に応えた。そして、初代王者に輝いた。

 今回の侍ジャパンは、戦力的に恵まれているとは言えない。準決勝で敗退した前回13年はメジャーリーガー不在。今回も青木だけだ。上原、ダルビッシュ、岩隈、田中、前田。この5人がいれば日本は間違いなく強いが、誰もいない。さらに、二刀流で期待された大谷も右足首痛で辞退。その一方で、他国ではこれまで以上にメジャーリーガーが参加している。

 ただ、嘆いていても始まらない。世界一奪還へ、小久保監督に求めれるのは、戦力を最大限に使いこなすこと。開幕前の実戦で連敗を止めた1日の台湾プロ選抜戦では、4番・筒香の場面で重盗のサインを送り、成功した。計4盗塁を絡めて9―1と快勝。侍ジャパンらしい機動力を駆使した試合だった。4日後に迫った本番。小久保監督の思い切った采配に注目している。(記者コラム・飯塚 荒太)

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2017年3月3日のニュース