監督業の重圧と孤独 小久保監督が安らぐ「自分だけの時間」とは

[ 2017年2月26日 10:40 ]

<日本・ソ>8回を終え、選手交代を告げた小久保監督はベンチに戻る
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 監督、とりわけ日本代表監督ともなれば、隙を見せることはできない。侍ジャパンの指揮を執る小久保裕紀監督も、どこで食事をしているのだろうと思うくらい、選手に目を向ける。

 23日から始まった宮崎合宿では、午前中の連携プレーを終えると、野手が昼食をとる時間に、車でブルペンへ移動。投手の投球練習を全員見届けた上で、再び本球場に戻る。野手の打撃練習から目を離すことはなく、試合後の特打まで、必ず打撃ケージ付近に立つ。

 ふと、4年前を思い出した。前回13年のWBCで侍ジャパンを率いた山本浩二監督はホテルに戻った後、コーチ陣との夕食までの小1時間、勝手に寝てしまうことが多々あったという。「思えば、それが自分だけの空間だったのかもな」と話してくれたことを思い出す。準決勝敗退の翌朝、決戦の地となったサンフランシスコの宿舎の部屋に呼んでもらえた。「今までありがとう」と始まり「負けてしまったことは残念だが、後悔はないよ」と話してくれた時の表情は実に柔和だった。重圧から解放されたという率直な思いが表情に出ていたのだと思う。

 話を戻す。WBCへ向けた初実戦となった25日のソフトバンクとの練習試合は敗れたが、試合前のペン囲みで、小久保監督は連日ランニングをしていることを明かしてくれた。「時間がもったいないからね」。その最中には、音楽ではなく「人の講演を聴く」のだという。そのジャンルは多岐にわたる。「単純に知らないことを知りたい」という好奇心を満たす瞬間こそ、小久保監督にとっての「自分の時間」であるのだろうと推察する。

 24日に宮崎市内で行われた決起集会では、1階にスタッフ、2階に選手らがいたが、小久保監督は焼酎瓶を片手に、1階と2階のすべてのテーブルを回ったという。孤独とも言える監督業。試合の局面における決断は、勝敗に直結する。賞賛や批判も野球の一つだが、試合を離れた部分で、指揮官の機微に触れることも同じくらい興味深い。 (記者コラム=倉橋 憲史)

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2017年2月26日のニュース