菅野智之 安定感抜群の投球で世界の頂点狙う

[ 2017年2月4日 08:30 ]

練習中に笑顔を見せる巨人・菅野
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 【宮入徹の記録の風景】プロ野球選手としてのキャリアはまだ4シーズンに過ぎない。だが、巨人の菅野智之投手(27)の投球術は既にベテランの域に達しているように映る。実際、昨年までのリーグ防御率順位は13年6位、14年1位、15年2位、16年1位。全て10傑入りを果たし、最優秀防御率のタイトルを早くも2度手にしている。

 防御率1位の最多回数は西鉄・稲尾和久の5度。3度以上でも広島・前田健太(3度)まで8人しかいない。もしも菅野が今季獲得すれば史上9人目。さらに入団5年目までに3度は稲尾がデビュー年の56年から3年連続で記録したのあるだけ。今季の菅野が鉄腕・稲尾に匹敵する記録を残せるか興味深い。

 菅野のなによりの長所は、相手打者を簡単に四球で出塁させないことだ。昨年の与四球はセ・リーグ規定投球回到達者12人の中では最少の26。入団1年目から3年目までの与四球は37、36、41だったが、昨年は初めて30未満に抑え、制球力に磨きをかけた。

 中でも特筆されるのがカウント3ボール0ストライクからの四球の少なさ。昨年は726人の打者と対戦したが、ストレートの与四球は6月10日ソフトバンク戦の8回、中村晃に許したわずか1度。セ・リーグの打者相手に与えた19四球のうち4球目で歩かせたのは皆無だった。

 60年以降、セ・パ両リーグで規定投球回に達した投手は延べ2112人を数える。この中でシーズンを通じ、ストレートの四球を1つも与えなかった投手が1人だけいる。チームの先輩でもある04年の上原浩治だ。このシーズン、上原は637人の打者と対戦し、与えた四球は23。防御率2・60の数字を残し、新人だった99年に次ぎ自身2度目の最優秀防御率を獲得した。その後、大リーグに移ってからの活躍ぶりは周知の通りだ。

 それでも菅野のようにシーズン1個に抑えたのもかなりの希少記録。他には76年にロッテの八木沢荘六、79年に近鉄の柳田豊とパ・リーグの2人しかいない。つまりストレートの四球がシーズン1個以下は60年以降の57シーズンで上原を加え4人だけということになる。

 3月には第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開かれる。菅野も代表に名を連ねるが、06年の第1回大会で前述の上原は先発投手として、日本代表の初優勝に貢献した。この大会で上原は3試合に先発し、2勝0敗、防御率1・59の好成績。群を抜く制球力は健在で、打者67人に対し、与えた四球は1つもなかった。初めての大会、それも不慣れなWBCの公式球を使用しながらレギュラーシーズン同様の投球スタイルを貫いた。

 今回は、菅野とともに先発の一角として期待された日本ハムの大谷が、右足首故障のため代表から離脱。菅野にかかる比重も当然、大きくなりそうだ。正確無比のコントロールを武器に優勝奪回の柱になれるか。注目のマウンドが迫っている。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から26回連続で資料説明役として出席。

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