【球団トップに聞く】ヤクルト・衣笠社長 4つのキーワード軸に「信念」を持って改革

[ 2017年1月26日 10:30 ]

球団トップに聞く!ヤクルト・衣笠剛球団社長(上)

15年リーグ優勝の盾の前で思いを語る衣笠球団社長兼オーナー代行
Photo By スポニチ

 就任7年目を迎えたヤクルトの衣笠剛球団社長兼オーナー代行(68)は、持ち前のリーダーシップで球団に改革を起こしている。埼玉県戸田市内の2軍施設を充実させることで戦力強化、グッズショップを新設してファン拡大に取り組んだ。これらが2015年のリーグ優勝という形で結実した。今季はドラフト、外国人で投手陣を積極補強。01年以来16年ぶりの日本一を目指すチーム、そして球団への思いを聞いた。

 柔らかな物腰に、ゆったりとした語り口。常に上品なスーツに身を包み、背筋はビシッと伸びている。その立ち居振る舞いからは「紳士」という言葉を連想させる。2017年、元日。衣笠球団社長は、東京・明治神宮で行われた「歳旦祭」に参列した。

 「昨年はリーグ連覇、日本一再挑戦と強い気持ちで臨んだ。だが、残念ながらリーグ5位に終わった。“一年の計は元旦にあり”という言葉がありますが、元日の朝、参拝をして、今年に懸ける思いを祈念したかった」

 11年に球団社長に就任した。「興行の世界は未知の分野」。驚きとともに、わずかの戸惑いもあった。「丸2年が経過し、3年目にして少し理解できてきた」。謙遜するが、ヤクルト本社時代に身をもって確立させた「信念」が衣笠社長の行動力の根底にはあった。

 84年。ヤクルト本社が注力することになった日本生まれの生涯スポーツ・バウンドテニスの普及を担当することになった。当時、その名前を知るものは皆無と言っても過言ではなかった。「最初から“いいよ、話を聞いてやる”と言う人は少なかった」と振り返る。

 各県に足しげく通い、頭を下げた。地道に続け、94年に日本体育協会に準加盟、01年には正式加盟された。「牛歩のごとく、よくやってきたと思う」。衣笠社長は現在も協会の会長を務めている。この間「普及の勉強になれば」と多くの本も読みあさった。そこで出合ったキーワードがあった。

 「普及させる、強くさせるには、4つのことが大切と書いてあった。1つは良き指導者。2つ目に活動資金。3つ目が練習環境。4つ目が野球で言えば選手」。これが後に、ヤクルトの球団社長としての軸になった。社長就任後、埼玉県戸田市の2軍施設を視察した。着目したのは3番目、練習環境の改善だった。

 ハングリーさの重要性は認識していたが「必要なもの、しかるべき施設、そういうものをきちんと整えて練習してもらうことが必要。興行のことは分からないけど、施設の改善は自分でもできると思った」。ここに力を注いだ。オーナーのバックアップをもらいながら、改善点を洗い出した。 (川手 達矢)

 ◆衣笠 剛(きぬがさ・つよし)1949年(昭24)1月21日、愛媛県生まれの68歳。日大卒業後、71年にヤクルト本社に入社し、営業部門などを担当。専務取締役を経て、11年から現職に就いた。本社在籍中には日本生まれの生涯スポーツである「バウンドテニス」の普及に尽力。現在も協会会長を務めている。

続きを表示

2017年1月26日のニュース