【球団トップに聞く】西武・居郷社長 元野球エリート 常勝軍団復活にかける思い

[ 2017年1月24日 11:15 ]

球団トップに聞く!西武・居郷肇球団社長(上)

日本一に輝いた08年の胴上げ写真パネルを前に巻き返しを宣言した西武・居郷球団社長
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 就任6年を迎えた西武の居郷肇球団社長(60)は倉敷工で甲子園出場、黄金時代の法大でも主軸で活躍したプロ注目の選手だった。社業に専念してからは営業や接客に打ち込み、その経験が実を結び、現在の観客動員数の増加につながっている。かつての黄金時代を知る辻発彦監督(58)を招へいしての1年目。3年連続Bクラスと低迷する現状から常勝軍団復活にかける思いを聞いた。

 柔和な表情が曇る。責任は誰よりも痛感していた。82年からプロ野球記録の25年連続Aクラス、85〜94年の10年間で9度のリーグ優勝と、黄金時代を築いた西武が3年連続Bクラスに低迷している。居郷球団社長が街を歩くと「そろそろどうにかしなきゃいけないんだよ」とファンに声を掛けられる。田辺前監督が退任したこのオフには次期監督を提案する匿名の手紙も球団事務所に届いた。

 「ファンの皆さまには申し訳ない気持ちでいっぱい。意見を言っていただけるのはありがたいし、感謝しかありません。西武の栄光が途切れている。今までAクラスが続いた良い時代を考えたら、落ちるところまで落ちた。辻新監督の下で伝統を引き継ぎながら新しい西武を再建したい」

 11年3月に球団社長に就任。プリンスホテルの硬式野球部出身で初の抜てきだった。その経歴には深みがある。かつてはプロ球団も注目するアマチュア野球のエリートだった。倉敷工のエースとして甲子園に出場し、3年春のセンバツはベスト8に進出。法大で内野手に転向して黄金時代をけん引した。1学年上の江川卓氏(野球評論家)らとリーグ4連覇。4年時には主将を務め、春の立大戦で六大学リーグ史上初のサイクル安打を達成した。「法政の上下関係は厳しかったけど、体力、忍耐、根性を学びました」と振り返る。社会人野球のプリンスホテル1期生としてプレーを続け、30歳で現役引退した。

 社業に専念して環境は一変した。大箱根カントリークラブや隣接するプリンスホテルで営業や接客の日々。野球をしていた時はマネジャーに新幹線、飛行機のチケットを手配してもらっていたため、利用客から聞かれても買い方が分からない。「野球バカでしたから、ワープロの使い方もお札の数え方も分からない。年下の社員に頭を下げて教えてもらった」と苦笑いを浮かべる。

 午前6時前から午後9時すぎまで15時間以上立ち仕事で働く日々。会計で数字が合わず、帰宅がさらに1時間以上遅くなることも。野球一筋の生活から180度変わった環境に戸惑いは大きかった。「正直辞めたいなと思った時もありました」。しかし、サービスマンとして勤務した箱根での20年間がその後の球団経営に大きく役立つことになる。 (平尾 類)

 ◆居郷 肇(いごう・はじめ)1956年(昭31)4月11日、岡山県生まれの60歳。倉敷工ではエースとして3年春のセンバツ8強。法大では内野手でベストナインを2度獲得し、東京六大学リーグ通算打率・361、5本塁打。プリンスホテルに入社して30歳で現役引退。大箱根カントリークラブ総支配人などを経て09年に同社執行役員就任。11年3月から現職。

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