星野氏 殿堂入りも球界に危機感「底辺を広げないと破滅する」

[ 2017年1月17日 05:30 ]

明大時代の恩師・島岡吉郎氏のレリーフを見つめ、感慨深げな表情を見せる星野仙一氏
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 野球殿堂入りを決める野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、競技者表彰のエキスパート表彰に中日、阪神、楽天の3球団で監督を務め、13年に楽天を初の日本一に導いた星野仙一氏(69=楽天球団副会長)、カミソリシュートを武器に大洋で通算201勝を挙げた平松政次氏(69)を選出した。プレーヤー表彰は西武の黄金時代を正捕手として支えた伊東勤氏(54=ロッテ監督)を選出。特別表彰は長くアマ野球の審判員を務めた故郷司裕氏、「公認野球規則」制作の中心的役割を果たした故鈴木美嶺氏がそれぞれ選ばれた。

 「燃える男」に年齢は関係ない。球界最高の栄誉である殿堂入り。14年限りで楽天監督を退き、現在は球団副会長の要職にある星野氏は、穏やかな表情で喜びを口にした。

 「あと1週間(22日)で70歳になる。これだけ野球に携われるのは本当に幸せ。野球に感謝しないといけない。ああ、野球をやってきて良かったなあ…と思う」

 投手として146勝。「闘将」としては史上10位の1181勝を挙げ、3球団を計4度のリーグ優勝に導いた。「全て最下位のチームを引き受けたけど2、3年後に優勝できた。運良く選手に恵まれた。選手のおかげ」。長いユニホーム生活で、常に闘志をむき出しにしてきたのが宿命のライバル・巨人。74年はリーグ10連覇を阻止し、自身は沢村賞を受賞。優勝後のビールかけでは「日本シリーズは邪魔。俺は巨人を倒したからいいんだ!」と言い切ったほど、G倒に執念を燃やした。

 しかし、70歳の古希を目前にした今、胸の内に敵味方のこだわりはない。「セとかパとか、勝った負けたとか…。野球界全体を考えないと。プロ野球、というより野球界がどうあるべきか。一つになって真剣に考えていかなきゃいけない」。少子化で競技人口が減少する流れの中で、目指すは底辺の拡大。現状はアマ側が育てた選手を「ある意味、プロ野球が“おいしいどこ取り”している」と分析し、「底辺を広げないと、やがてプロ野球は破滅する」と警鐘を鳴らした。晴れの席で厳しい言葉を口にするほど、星野氏は将来に危機感を抱いている。

 アマ、プロ球界が一致団結して行動し、一人でも多くの子供に野球に興味を持ってもらう。星野氏は「(具体策も)ある。あるんだけど、まだまだデータを出してね」と野球振興のための腹案も抱いている。「野球界が一つになることをこれからも後押ししていく。これしかない」。かつてコミッショナー待望論も聞かれた燃える男の、球界改革に懸ける闘志は衰える気配もない。 (鈴木 勝巳)

 ◆星野 仙一(ほしの・せんいち)1947年(昭22)1月22日、岡山県倉敷市生まれの69歳。倉敷商、明大を経て、68年ドラフト1位で中日入団。先発、抑えとして活躍し、リーグ優勝に貢献した74年に沢村賞を受賞。引退後は3球団で監督を務め、中日で88年と99年、阪神で03年に優勝、楽天では13年に優勝と日本一を達成した。03、13年に正力賞受賞。08年北京五輪では日本代表監督を務めた。右投げ右打ち。

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