メジャーでも二刀流?斎藤隆氏が指導したパドレス・ベタンコートの可能性

[ 2017年1月13日 09:00 ]

クリスチャン・ベタンコート
Photo By ゲッティ=共同

 今季はメジャーで正真正銘の「Two―way player(二刀流)」が見られるかもしれない。もちろん、日本ハムの大谷のことではない。パドレスの25歳、クリスチャン・ベタンコートのことだ。73試合に出場した昨季の登録は「捕手」だが、今月11日、母国パナマでのウインターリーグで「投手」として本格的にデビューした。

 1回を無失点で、直球の球速は93〜96マイル(約150〜154キロ)を計測した。ベタンコートはメジャーでは既にマウンドに立っている。昨年5月31日のマリナーズ戦と6月13日のマーリンズ戦で、トータル1回2/3を1安打3四球無失点。いずれも大量リードを許した試合で、ここまではメジャーではよくあること。だが、この時の投球が球団関係者を驚かせた。直球は94マイル(約151キロ)を計測し、さらに53マイル(約85キロ)のナックルボールまで披露した。

 ここからベタンコートの二刀流育成計画が始まる。昨年9月。キャンプを行うアリゾナ州ピオリアの球団施設で、投手として本格的な練習を開始した。その際、指導に当たった一人が、日米両球界で活躍した斎藤隆氏だ。昨年1年間、パドレスにフロント留学していたが、9月は臨時コーチとして1週間、アリゾナでベタンコートら若手投手を指導した。その時の印象について、こう話す。

 「元々、捕手なので地肩は強い。ただ、捕手が二塁などに送球する時の癖で、頭が先に前に行ってしまう。だから、体の後ろ側に体重を残してから投げるようにアドバイスしました。だいぶ、投手らしくなってきた」

 ベタンコートは捕手としても「プロスペクト(若手有望株)」として期待されていただけに、身体能力は抜群。投手としてもメキメキと成長し、アリゾナでは97マイル(約156キロ)まで球速を上げたという。今回のウインターリーグでの登板は、実戦段階に入ったことを意味する。球団は救援投手として考えており、控え捕手と併用する方針。昨季は外野手、二塁手としても出場しており、究極の「スーパーユーティリティー」と言える。

 投手としてはまだまだ発展途上だが、斎藤氏は未知なる可能性に期待を懸ける。「ポテンシャルは凄い。97マイルの直球があって、しかもナックルを投げる。球速80キロくらい緩急差。ナックルボーラーでこんな速い球を投げる投手はいないからね。歴史を変えるような選手になる可能性はある」。今やメジャーを代表する守護神となったドジャースのジャンセンも、元々は捕手。大谷もそうだが、「常識」にとらわれなかったからこそ、今の二刀流での成功がある。大敗試合での投球を見て、投手をやらせようと考えたパドレス首脳陣の目を信じたい。(記者コラム・甘利 陽一)

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2017年1月13日のニュース