石井一久氏 用具の進化貢献もプロ選手の“仕事”

[ 2017年1月11日 11:00 ]

石井一久 クロスファイア

 プロ野球界は1月に入り、新人たちが動きだした。この時期の風物詩である入寮では、家財道具や自分なりのリラックスグッズなどを持ち込む光景がよく見られるが、選手にとって一番大切なのは、やはり野球用具だ。

 アマチュア時代は自分で用具を購入するが、1軍選手になれば、用具はほとんどメーカーから提供される。さらにレギュラークラスになれば、メーカーとアドバイザリー契約を結ぶ選手も多く、ステータスが1ランク上がる。1つのメーカーに統一する選手もいれば、グラブはA社、バットはB社、ウエアはC社と部分契約する選手も。用具というのは選手のこだわりが最も出る部分と言っていい。

 アドバイザリー契約を結んだ選手は、用具提供を受けるだけでなく、広告塔としての貢献に対する報酬も得る。「○○モデル」として一般に発売されれば、その選手に憧れる野球少年たちは同じ用具を使いたいと思う。その宣伝効果は大きい。ただ、成績が落ち込んでくると、アドバイザリー契約を打ち切られてしまうことも。プロの世界は用具契約もシビアだ。

 選手とメーカーは共存共栄の関係でなければならない。用具が届けばそれで終わりということではない。選手は現場に足を運んでくるメーカーの担当者とコミュニケーションを取り、生の声を伝えることが大事。例えば、僕はメジャーに移籍した時にグラブの革ひもの素材を強くしてもらうようにリクエストした。日本ではキャッチボールをしていてひもが切れることはめったにないが、メジャーのボールは重いので切れてしまうことがあった。「もっとこうした方がいい」など、選手からのアドバイスを取り入れることで野球用具は発展する。そして用具が進化すれば、それは技術の向上にもつながっていく。それがアドバイザリー契約を結んだ選手の使命でもある。

 最後に。これは都市伝説のようなものだが、一流選手のバットは質のいい木が使われ、質が少し落ちるものは、その他の選手に回るらしい。信じるか信じないかは、あなた次第です…。 (スポニチ本紙評論家)

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2017年1月11日のニュース