最後の可能性もあるWBC…今度こそ米国代表の本気のプレーを

[ 2017年1月10日 10:00 ]

 1番マイケル・ヤング(レンジャーズ)、2番デレク・ジーター(ヤンキース)、3番ケン・グリフィー(レッズ)、4番チッパー・ジョーンズ(ブレーブス)、5番アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)…。大リーグファンには胸躍るような布陣。06年の第1回WBCで、米国代表がメキシコ代表に敗れ2次リーグ敗退が決まった試合の先発オーダーである(所属は当時=以下同)。

 彼らは「顔」だけで選ばれた訳ではない。05年、ヤングは両リーグ最多安打とア・リーグ首位打者に輝き、Aロッドはア・リーグ本塁打王。35歳で5人のうち最年長だったグリフィーも打率・301、35本塁打、92打点を記録していた。やや弱いとされた先発陣もクレメンス(前アストロズ)、ピービ(パドレス)、ウィリス(マーリンズ)の3人合計で48勝だ。

 過去3大会で一度も決勝進出がない米国代表だが、他チームと比べれば毎回「最強メンバー」を集めてきた。3月の第4回大会も、投手はシャーザー(ナショナルズ)が9日(日本時間10日)、右手薬指骨折のため出場を見送る意向を示したものの、15年球宴に選出されたアーチャー(レイズ)が出場を表明済み。昨季17勝のプライス(レッドソックス)も候補メンバー入りしている。野手はポージー(ジャイアンツ)、アレナド(ロッキーズ)、ゴールドシュミット(ダイヤモンドバックス)ら、豪華なメンバーが並ぶ。しかし、最強メンバー=最強チームではないことを、歴史が証明している。「世界一決定戦」をワールドシリーズと考える大リーグのスーパースターたちが、開幕前の調整期間に行われる大会でコンディションとモチベーションをどこまで上げられるか。この課題は変わらない。

 13年大会では、主軸として招集されたテシェイラ(ヤンキース)が大会前、ライト(メッツ)が大会中に故障で離脱した。今回は、新設された「予備投手」10枠を駆使してカーショー(ドジャース)やバムガーナー(ジャイアンツ)らの参戦も噂されるが、カーショーはこれまで出場に前向きな発言をしていない。米メディアは、オーストラリアでの開幕戦開催により通常日程より前倒しされた14年に故障で離脱したためと指摘している。

 救援投手では、抑えもロングリリーフできる左腕ミラー(インディアンス)が出場予定。侍ジャパンの一員として2大会ぶりに参戦する青木(アストロズ)が「衝撃的すぎた。(左腕では)世界一かもしれない」と評したスライダーの使い手だが、昨季はポストシーズンも含めて80試合、93回1/3に登板した。フル回転はもちろん、万全の状態で臨むことも難しいのではないか。

 昨年11月に行われた侍ジャパン強化試合。メキシコ代表として来日し、2試合で1本塁打を含む3安打を記録した遊撃手ペーニャは、ジャイアンツで30試合に出場した昨季の最終所属は傘下3Aだった。今年も例年同様、3月には開幕メジャーを目指して競争を繰り広げなければならない。しかし、過去3大会で出場がない彼に「大事な時期だが選ばれたら出たい?」と聞くと「もちろん。国を背負って、国の誇りを持ってプレーできるんだから」と真っすぐな目で即答された。

 昨年11月末、第4回が最後になる可能性があるとも報道されたWBC。侍ジャパンの世界一奪回を願ってやまない一方で、今度こそ米国代表の本気のプレーを見たい。

(記者コラム・大林 幹雄)

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